133ab.堅動植図一合(けんどうしょくずいちごう) 右拡大図 左拡大図

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校異:abともに全体が大きな黒墨の×印で消されています。そのため、この図そのものが岩波版には 収録されていません。抹消は梅園ではなく、おそらく三浦黄鶴によるのものであろうと思いますが、この図を 消すと次の「134ab 輭動植図一合」(輭=軟)との対関係が壊れてしまいます。抹消され、未完成とはいえ、 一度は梅園自身が描いたこの図を載せる必要はないのでしょうか? 梅園は、空白を埋める作業を後世に託し たのだと思いますし、江戸時代に比べ圧倒的に豊富な知識を持っている私たちが、このような分類法を発展 させるべきではないでしょうか?

 右の図は「堅動植図一合」のうちの「堅動図」です。左は「堅植図」です。ふたつ合わせて「堅動植図一合」 となります。梅園の分類は極めて得意です。そもそも石や金属を植物に分類するというのは誰もが首を傾げますし、 人によっては無思慮にすぎると思うかもしれません。三枝博音(1892-1963)が学界に梅園を紹介したときにも 「科学的思考の粗忽さに耐えられない」という批判がありました。

 しかし、梅園の分類が徹底したオブジェクト指向だとしたらどうでしょう? 彼は「羽毛は動の植なり」と書 いています。羽や毛髪を植物だという人はまず居ないでしょう。しかし、その存在の様態は植物によく似ています。 その点では、歯も歯茎に植えられていますし、内蔵移植や植毛という言葉に「植」という文字が使われています。

 もし「植えられて静止しているもの」というオブジェクトを列挙すれば、羽根も毛髪も歯も草も木も、石も金属も そのオブジェクトに入ります。これは、

 逆に「植えられていなくて動くもの」というオブジェクトを列挙すれば、人も動物も、鳥も昆虫も、月も太陽も、 夜空の星々もそのオブジェクトに入ります。

 要するに梅園の分類が徹底したオブジェクト指向なのだとしたらどうでしょう。私はそれを「様態分類学」と 呼んでいる。こういう考え方からすれば、ホヤや珊瑚は植物になります。系統分類学的には動物になりますが、 それらは移動しません。卵の散乱はまるで植物が花粉を飛ばすかのようです。梅園のこういう特殊な分類方法は、 オブジェクト指向という観点から見直されるべきだと思われます。


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