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「統散容居図」は、上半分が「大物」つまり地球環境の大規模構造を示しています。主に天文気象現象がそれに当たります。
下半分が「小物」つまり地球環境の小規模構造を示しています。大規模構造である天文気象現象は、小規模構造つまり地上の生命圏を
包み、地上に変化を与えます。 小規模構造は、大規模構造の中に居り、水中・地上・空中に散在していて、大規模構造である天文気象現象から、昼夜の交代・ 季節の入れ替わり・温かさ・冷たさ・繁殖の周期などを獲得します。この図は、『玄語』の思想を非常にシンプルに現しています。 左の「持中天地図」は、「小」つまり「小物」を中心に配置しています。「小物」は生命圏のことです。 むろん、個々の生物も「小物」です。 図の上の「日」は、太陽を示しています。下の「地」は地球あるいは大地を意味しています。大地には、山野河海があります。 右端の「火」は、太陽による赤道付近の大気の加熱のことです。左端の「水」は、南極と北極による大気の冷却のことです。 加熱された大気は上昇し、上空で冷却されますが、下から連続して上昇気流が上がってきますから、南極と北極に向かって大気の上層を 移動していきます。この循環を最初に発見したのはハドレー、George Hadley(1685-1744)という人です。それでハドレー循環という名前がつけられました。 ただし、その後の研究によって、赤道から上昇した気流が南北両極に直接向かうのではなく、いくつかの循環に分離するということが わかってきました。しかし、赤道で加熱された大気が上空で上昇をやめ、南北両極に向かって流れていくという現象は、偏西風と貿易風の 発生を説明できるように成ったという点で重要な意味を持っていました。 梅園は、このハドレー循環を「呼吸」と書いています。上昇が「呼」下降が「吸」です。地球が呼吸しているように思えたからでしょう。 長崎からの手紙や、麻田剛立からの手紙などでハドレー循環を知ったのか、梅園が独自に発見したのかはわかりませんが、 ほぼ同時期にこの気象現象を発見しています。これは、東インド会社の貿易がもたらしたグローバルな気象現象の発見でした。 この図は「小冊」の中では傑出していて、天明浄本の図と比較して遜色ありません。『玄語』を研究するには、地球環境の大規模構造と 小規模構造の間に科学的因果関係を見出すことが重要です。それは自然科学を地球環境に統合することにつながります。 |