88b.天地華液図一合(裏)(てんちかえきずいちごう) 校異あり
89. 四界図(しかいず)   校異あり

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 前頁の「天地」の図は、「同胞孿胎図」の上半分の象限と同じと見てよいです。したがって「転持」が隠れていると思って下さい。「華液」の図は、「色」(しき)つまり、太陽の電磁波の領域です。黄鶴は「華液」の中央の「色」を「性」と書き換えており、これも間違いです。天明本「本宗」に、

00865: 色気の成る所は、華液に於て濃を為す。
00866: 華は日影を開く。
00867: 液は水燥を開く。以て虚動実静の中に充つ。

と書かれていますから、大気中と水中の光も「色気」(しきき)、つまり電磁波領域だとみなしていたことが分かります。出版された『玄語』は、三浦黄鶴校訂版ですから、これまでの大学での研究は、三浦黄鶴版『玄語』の研究をしていたことになります。それでは『玄語』という書物の本質がわかるはずがありません。

 「色気の成る所は、華液に於て濃を為す。」という文は、太陽の光・透明な大気・青空・曇り空・霞・陽炎・蜃気楼・物の色彩・水中の光など、光の多様な変化を意味する文で、これを生命圏を意味する「性」に置き換えてよいはずがありません。

 右の図の「華」と「液」は、太陽の光と光を吸収するものです。「液」は基本的には「燥」(大気圏)と「液」(水圏)を意味しますが、梅園は光を吸収する性格を持つという点で水と宇宙を同等に見ています。深海は暗黒です。宇宙空間も暗黒です。ですから、この図の「液」は大気圏・水圏・宇宙空間まで含んでいると思って下さい。

 左の「四界図」は、これまでにも出てきましたので、語の意味はある程度はお分かりになるはずです。中心の「一」は全一者である「玄なる一元気」です。 それが「没」「露」「性」「体」に分かれ、

 没
  >天界・・・時間と空間
 性

 没
  >機界・・・天体の運動領域と地表の運動領域
 体

 露
  >体界・・・形を持つものの領域
 体

 露
  >性界・・・光と水が生み出す生命の領域
 性

と組み合わされて、「天界」「体界」「体界」「性界」という四つの領域が作り出され、これだけのものが揃って、「天地」つまり地球環境世界が生み出されるわけです。西洋の自然科学的発想とはまったく異なったものの考え方です。江戸中期には、自然科学はまだ未熟でしたし、自然科学による自然と生活環境の改造もまだまったくありませんでした。

 その点では16,17世紀までのヨーロッパも同様でした。問題は、産業革命以降のヨーロッパの世界進出から始まりました。それもそろそろ終わりにしなければなりません。その時に役立つのが三浦梅園の地球環境システム理論です。


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