3.気物相食混成図一合(きぶつそうしょくこんせいずいちごう。きぶつあいはみこんせいするのずいちごう) 校異あり

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 次には、同じく見開きで「気物相食混成図一合」と題されたこの図があります。

「一合」というのは、ワンペアという意味です。先の図もそうですが、この図もワンペアです。
このように見開きでワンペアになる図を「見開き一合図」と私は名付けています。当然、閉じれば見えなくなります。見えなくなるというのは、最初の「一不上図」に戻るということです。開くということは、「一不上図」を正反対の存在に分けるということです。

 ページを開くか閉じるかということにも論理的な意味があるのが『玄語』という本の特徴ですが、このような本はまず類例がありません。しかし、現在出版されている『玄語』は、図を縮小して一頁にいくつも並べているので、見開きの意味がわかりません。梅園は、論理記号というものがなかった時代に本の綴じ目(当然、直線になります)や折り線(和本は二つ折りにして糸綴じにします)まで論理記号として使っていたのですが、後世の研究者にはそれがわからなかったのです。

 白い円の「一」と黒い円の「一」は、正反対のものが一対一に対応して存在するということです。「一一」と「気物」がどう違うかと言いますと、「一一」は数ですが、「気物」は語です。語ということは概念であるということです。「一一」の「一」は、数列上の数ではなく独特の定義をほどこされた数です。その定義とは、

 一なる者は数えずして足る。故に之を剖(さ)きて破る可からざるに至るも猶お一を尽さず。之を加えて載す可からざるに至るも猶お一に至らず。

何だかありがたいお経のような定義ですね。「数えずして足る」ということは数える前から存在しているということです。それが最初の白紙の図に書かれた「一不上図」の「一」です。この「一」は、かぞえ数としての1ではなく「語り得ざるもの」を示す代数です。この「一」があらゆる物を包んでいるというのが『玄語』の基本の論理です。私はこの「一」を存在数と呼んでいます。存在を指示する代数だからです。

 「気物」の「気」は、一言で言えば非物質のことです。「物」は物質もしくは物質からできているものすべてです。以下、思いつくままに書いていきます。

 <気に属するもの>
 ・時間・空間・過去・現在・未来・明るさ・暗さ・輝き・喜び・悲しみ・方向・音・静寂・意識・無意識・電気・磁気・香り・色彩・虹・蜃気楼・その他

 <物に属するもの>
 ・海・山・川・動物・植物・土・石・砂・水・雪・氷・着物・履物・紙・地球・天球・太陽・惑星・衛星・銀河・乗り物・入れ物・刃物・大工道具・その他

梅園は『多賀墨卿君にこたふる書』という書簡体の『玄語』解説書(おそらく実際に出された手紙を補筆して弟子たちの閲覧用に製本したもの)の中で、

  是れ即ち二の位にて候。是を二の位と申し候は、天地かくの如く紛々擾々として、物多き様に見え候えども、只かたちある物ひとつ、かたちなき物ひとつ、此の外 に何も物なく候。其のかたち有る物を物と申し、かたちなき物を気と申し候。

と書いています。「かたちある物ひとつ」が黒い円の「物」のことで、「かたちなき物ひとつ」が白い円の「気」のことです。この「気」と「物」が、一対一に対応していることを示しているのが、最初の白と黒の「一」の図です。それを更に足し合わせたら、それはもう人間の認識を超越していますよ、ということを示しているのが、「一不上図」と書かれた白紙の図です。

 

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