【玄語\小冊\人部\天命】80.txtの検索用訓読。 総ルビ訓読版  検索用原文



12343: 天より之を言えば〉則ち為す者は気なり〉成す者は天なり〉

12344: 人より之を言えば》則ち致す者は我なり》至る者は彼なり》

12345: 我なる者は〉善悪機す〉

12346: 彼なる者は》吉凶事す》

12347: 我なる者は》之を如何ともす可きなり》

12348: 彼なる者は》之を如何ともす可からざるなり》

12349: 之を如何ともす可きは則ち人〉

12350: 之を如何ともす可からざるは則ち天》人中の天人なり。

12351: 死生通塞なる者は〉天よりす〉

12352: 殺活与奪なる者は》人よりす》

12353: 天よりする者は〉気は為し天は成す〉

12354: 人よりする者は》我は致し彼は至る》

12355: 為成致至。来して当する者は時なり〉

12356:      処して遇する者は地なり》

12357: 来当するよりして之を観れば》則ち天に非ざる者無し〉

12358: 処遇するよりして之を観れば》則ち命に非ざる者無し》故に

12359: 天は其の時に当すれば〉夏す〉冬す〉古す〉今す〉

12360: 物は其の時に遇すれば》栄す》枯す》生す》化す》故に

12361: 時は来して当す〉

12362: 人は往して遇す》

12363: 彼は来して当す〉

12364: 我は往して遇す》

12365: 当するよりして天と曰う〉

12366: 遇するよりして命と曰う》

12367:  統して之を言えば〉則ち人も亦た天なり〉天も亦た気なり〉

12368:  分して之を言えば》則ち天は天神を分し》人は彼我を分す》故に。

12369:  之を天と謂うは〉有意を以て〉無意に任ずればなり〉

12370:  之を命と謂うは》有作を以て》有為を受くればなり》

12371:  惟だ能く其の無意を知る〉是を以て之を天に委す〉

12372:  惟だ能く其の成を知る》 是を以て其の地に安んず》

12373:  有意よりして遇と謂う〉

12374:  受よりして 命と謂う》

12375:  惟だ能く其の有意を知る〉故に其の同を己れに求めず〉

12376:  惟だ能く其の受を知る》 是を以て其の外に詭遇せず》

12377:  已往は諌す可からず〉                  (諌す=ただす)

12378:  来者は猶お追う可し》

12379:  当者に安んず〉

12380:  遇者に慎しむ》故に

12381: 天人は。気を同すれば〉則ち為 同なり〉

12382:     意を反すれば》則ち態 異なり》是に於て

12383: 為作は分す。是を以て。来者は当す〉

12384:            往者は遇す》則ち

12385: 為成致至は。参差として錯綜す。市人の相い面するが如き然り。

12386: 来するや〉機に発す〉

12387: 往するや》跡に成す》

12388: 機なる者は〉Aなる可し〉

12389:       昜なる可し〉

12390:       天なる可し〉

12391:       地なる可し〉

12392:       修む可し〉

12393:       荒む可し〉

12394:       活す可し〉

12395:       殺す可し〉

12396: 由りて来する所を知らず〉

12397: 触れて変する所を測らず〉

12398: 跡なる者は》Aなり》

12399:       昜なり》

12400:       天なり》

12401:       地なり》

12402:       修なり》

12403:       荒なり》

12404:       殺なり》

12405:       活なり》

12406: 変する所に成す》

12407: 触るる所にIわず》

12408:  機は其れ射か。意は未だ触れざれば。則ち殺活相い忘る。

12409:  触るれば則ち殺活跡を成す。是の故に。

12410:  機 触るれば則ち跡有り。跡有れば。則ち窺う可し。是を以て

12411:  機触れ跡成りて。対待 分す。

12412:  対待既に分すれば。柔は剛に非ず。剛は柔に非ず。惟だ其の一なり。

12413:  天を転して已まず〉

12414:  地を持して息まず》

12415:  目の明を蔽わず〉

12416:  耳の聡を隔せず》

12417:  寒暑は相い通す〉

12418:  升降は碍げず》

12419:  剛ならず柔ならず。剛柔ならざるに非ず。

12420:  或ひと曰く。火は無より生して有り。

12421:  有よりして無に帰す。斯の若きは如何。

12422:  曰く。無なれば則ち火に非ず〉有なれば則ち無に非ず〉

12423:     燃ゆれば則ち暗に非ず》滅すれば則ち明に非ず》

12424:  跡は則ち二なり〉

12425:  跡を為す者は二に非ず》是の故に。

12426: 来すれば則ち当せざる靡し〉

12427: 往すれば則ち遇せざる靡し》

12428: 吉に遇うを福と曰う〉

12429: 凶に遇うを禍と曰う》

12430: 吉に遇わざれば則ち凶に遇う〉

12431: 凶に遇わざれば則ち吉に遇う》

12432: 勢は平を持し難く。力は両全たること難し。

12433: 勢力は同じからず。而して時機の変は預し難し。

12434:  弧矢を以て之を喩えるに。

12435:  弧矢は。物なり。

12436:  弛張は。事なり。

12437:  弛張をせざることを得ざる者は。勢なり。

12438:  弛張に勝る者は。力なり。

12439:  以て弛張す可く。以て弛張す可からざる者は。時なり。

12440:  以て弛張す可く。以て弛張せざる可き者は。機なり。是の故に。

12441:  機の触るるに由りて時なる者は。哲者も之を預すること能わず。是れ

12442:  時変の無窮なる所以なり。事の勢に随いて赴く者は。庸人も必ず察す。

12443:  是れ事理の無二なる所以なり。

12444:  時機は知る可からず。事勢は如何ともす可からず。故に

12445:  時を権りて動き。機を見て作す者は。其の身を辱しめず。

12446:  勢に随いて上下し。事に臨みて揣摩する者は。将に其の身を辱しめんとす。

12447:  故に哲者は。機を慎しみ。有力者は機を回らす。是の故に。      (回らす=めぐらす)

12448: 姦邪暴虐は〉衆を挙げて目を反すれども〉而も之をして窮せ使むること能わず〉

12449: 温厚慈愛は》世を挙げて目を注すれども》而も之をして達せ使むること能わず》

12450: 苦節は人以て之を愛し〉衛生は自ら以て之を護すれども〉而も之をして寿なら使むること能わず〉

12451: 悖徳は世以て之を厭い》縦慾は自ら以て之を棄つれども》而も之をして夭なら使むること能わず》

12452: 故に。其の事に意無くして〉而して能く其の事を為する者は〉気なり〉

12453:    其の事に意無くして》而して  其の事の成する者は》天なり》

12454: 愛せば則ち之を奉ず〉

12455: 悪めば則ち之を棄つ》

12456: 思惟謀慮して。以て殺活与奪を為す者は。乃ち人なり。然り而して殺活与奪。

12457: 我よりする者は〉養う可きなり〉慎しむ可きなり〉故に之を修す〉

12458: 彼よりする者は》養い難し》慎しみ難し》故に之を俟つ》是を以て。

12459: 修荒は天に在らず〉志行を以て之を言う〉

12460: 禍福は己に在らず》天命を以て之を言う》

12461: 機は触れ勢は走る〉

12462: 力は持し跡は成す》故に。

12463: 触るる者は測る可からず〉

12464: 走る者は回らす可からず》      

12465: 持する者は争う可からず。

12466: 定する者は変る可からず。

12467:  譬えば暗に棊子を取りて以て之を擲つが如し。

12468:  奇偶參差し。我の欲する所に或いは会し或いは否す。

12469:  奇偶ならざるを得ざる者は〉勢なり〉

12470:  之を奇偶にする者は》   力なり》

12471:  奇を発し偶を発する者は。機なり。奇偶は成りてIわず。

12472:  跡 已に定まる。然り而して奇を欲し偶を欲する者は。人の私なり。

12473:  奇偶は己の欲するが為にして来るに非ず〉

12474:     己の欲する所に違いて来らざるに非ず〉

12475:  其の然る者は。己の求むる所の者と。会する有り。違する有り。是れ

12476:  時の避く可からず。命の遁るる可からざる所以なり。惟だ

12477:  天を以て徒然と為す〉故に

12478:  無意を侮り〉誠を信ぜず〉其の蔽や放なり〉

12479:  惟だ神を観て有意と為す》故に

12480:  鬼神に於て役せられ》因果に陥る》

12481:  之を数に問い》之を前定に委ぬ》其の蔽や愚なり》

12482: 善悪の帰する有る者は〉誠なり〉

12483: 治乱の定まらざる者は》勢なり》

12484: 我は有意の為を以て〉

12485:   無意の成を観る》

12486: 成は意の期する所に会すれば〉則ち順を為す〉

12487:   意の期する所に会せざれば》則ち逆を為す》此の故に。

12488: 遇の順逆は。無意に成す〉

12489:       有意に分す》

12490:  世 或いは意う。命なる者は。天の賦する所にして。     (意う=おもう)

12491:  人人生前預め定まり。人は各おの之を負荷して行き。

12492:  天なる者は。穆然として上に居り。以て命を物に於て賦し。

12493:  又た能く臧否を察して。賞罰を降すと。           (臧否=そうひ)

12494:  是に於て。水火兵歳の人に災いするに。

12495:  千万人を兼ねて一時に竭する者を見て。之に惑う。

12496:  譬えば茲に二臣有らんに。

12497:  同じく君命を危難の際に奉じ。将に東西に使いせんとす。而して

12498:  舟を港口に繋ぎて。風を待たんに。

12499:  時 方に西風起り。東舟乃ち発せん。            (方に=まさに)

12500:  二臣 各斉しく忠を懐い。各斉しく急を憂う。然り而して

12501:  東使は忠懐以て伸び。功名以て遂ぐ。

12502:  西使は忠懐伸びず。 功名遂げず。

12503:  風は豈に意有らんや。風に遇う者に意有るのみ。

12504:  縦使東使以て天 己れを獲すと為し。            (縦使=たとい)

12505:    西使以て天 己れを棄つと為すも。 亦た有意の窺Eのみ。

12506:  其の成る者〉己の欲する所に会えば〉則ち我に順がうなり〉

12507:        己の所する欲に違えば〉則ち我に逆らうなり〉

12508:  天は果して預め命を定むるか〉

12509:  何ぞ西使を悪み〉何ぞ東使を愛するか〉

12510:  至る者は〉命の正なり〉豈に多寡の事ならんや〉

12511:  水の漲ぎるを視て渉る》

12512:  火の熾なるを視て踏む》

12513:  寇を招きて致す》

12514:  耕さずして餒す》

12515:  致す者は》命の非なり》豈に多寡の事ならんや》

12516:  下なる者は。命を上に受く。

12517:  士は顛沛の厄に死す〉

12518:  民は饑荒の歳に餓す》

12519:  我れ之を如何ともす可からず。

12520:  上なる者は。命を下に制す。

12521:  其の将牧たる者は。失策を悔いず。倉を発くことを知らず。  (発く=ひらく)

12522:  手を之を如何ともす可きに拱す。故に

12523:  天なる者は〉下を観監して〉賞罰を降す者に非ず〉惟だ誠のIう可からざる有り〉

12524:  命なる者は》生前預め之を各各に賦するに非ず》惟だ当遇の事を定む》

12525:  天人を以て之を分すれば〉則ち為成なる者は〉天なり〉

12526:                致至なる者は〉人なり〉

12527:  我より之を言えば》至る者も亦た成する者なり》惟だ

12528:  致す者にして我の為す者なり》

12529: 孝悌の父兄に親しまれ〉忠信の君上に信ぜられ〉

12530: 身を修むれば人は従い〉徳を施せば福の随うは〉

12531: 是れ遇の順〉事の当然にして〉有意の愉とする所の者なり〉

12532: 孝悌の父兄に親しまれず》忠信の君上に信ぜられず》

12533: 身を修めて人に悖られ》徳を施して禍を結ぶは》        (悖る=はばかる)

12534: 是れ遇の逆》事の不当然にして》有意の不平とする者なり》是の故に。

12535: 意を以て之を分かてば〉則ち順逆有り〉

12536: 道を以て之を修むれば》則ち正非有り》

12537: 為す者は己れよりす〉

12538: 成る者は我に在らず》故に。

12539: 為す者を尽して〉遇う者の順逆を問わず〉惟だ命有りと曰う〉

12540: 己れを修して遇う所に於て安んず》惟だ命を俟つと曰う》蓋し。

12541: 君子の命に於ける〉俟ちて謀らず〉正しく之に当る〉

12542: 小人の命に於ける》謀りて俟たず》詭りて之に遇う》故に惟だ

12543: 君子にして〉以て天と曰い命と曰う可し〉

12544: 小人にして》未だ以て天と曰い命と曰う可からず》正非の分なり。

12545:  君子は〉正履の外に於て冀遇せず〉

12546:  小人は》幸を詭遇の中に於て謀る》蓋し

12547:  農の田に於ける。種植すること時に後れず〉

12548:          耕耘すること力を省かず〉

12549:          当に稼の多きに遇うべし〉

12550:  然れども其の多寡は猶お自ら必とす可からず〉

12551:  若し獲の寡きを悪んで》而して種植を時にせず》耕耘に力せずんば》

12552:  縦い之を獲る有りとも》幸なり》故に

12553:  穡の寡きを以て〉   稼の務めを改めず〉之を良農と為す〉    (穡=しょく)

12554:  稼の事に倦んで》而して穡の多きを望む》 之を惰農と為す》是を以て。

12555:  命なる者は。俟つ可し〉

12556:        謀る可からざるなり》

12557:  俟つ者は〉従容として之に当たるの謂にして〉而して期するの謂に非ず〉

12558:  忠信孝悌なる者は〉天の則なり〉我れ従いて之を履む〉

12559:  親疏信否なる者は〉人の機なり〉我れ正しく之に当る〉

12560:  謀なる者は》冀遇して之を求めるの謂にして》而して慮の謂に非ず》

12561:  親信を阿順に迎え》忌諱を足恭に避く》

12562:  履む可きを履まず》而して幸を外よりする者に於て冀う》

12563:  足恭阿順の時に遇うや。必ず忠信孝悌の世に容れられざるを笑わん。

12564:  世に容れられざるは〉命なり〉

12565:  時に遇する者は》  幸なり》

12566:  詭遇の遇〉君子は迎えず〉

12567:  正履の厄》丈夫は寧ぞ之を避けんや》是れ             (寧ぞ=なんぞ)

12568:  其の俟ちて謀らざる所以なり。謀れば則ち俟たず。

12569:  俟たざれば則ち詭遇す。詭遇すれば則ち至らざる所莫し。故に

12570:  為する者は己れに在りて〉而して之を如何ともす可き者なり〉故に

12571:  遇を正非に於て分つ〉

12572:  成る者は我に在らずして》而して之を如何ともす可からざる者なり》故に

12573:  遇の順逆に従う》

12574:  譬えば此に二人有らんに。其の一人は〉飯を餐して死す〉

12575:              其の一人は》酖を飲んで死なず》     (酖=ちん)

12576:  人は親しく之を見ると雖も。何ぞ飯之を舎てん〉酖之を飲まん》故に

12577:  之を 之を如何ともす可からざる者に於て問わず。故に

12578:  寧ろ正を得て斃るとも。而も不正を以てして存するを希わず。

12579:  貧賎は常に憤憤たり〉

12580:  富貴は猶お怏怏たり》

12581:  纔に払戻する所有れば。則ち色を起して曰く。善に利無し。命は言うに足らず。

12582:  天は報無し。悪を縦にす可きと。是れ乃ち          (縦=ほしいまま)

12583:  正に天と市とを為すを欲するなり。

12584:  出処 操守を忘る〉

12585:  取捨 争奪を致す》

12586:  禍の伏す所を知らず〉

12587:  辱の従う所を顧みず》

12588:  頑然として動く〉

12589:  敖然として畏るること無し》是れ乃ち天を以て既に休すと為すなり。

12590:  君子は豈に富貴を悪み〉而して貧賎に就く〉

12591:  安佚を厭いて》而して艱難に従う者ならんや》

12592:  則を履みて正しく立てば。来たる者は之れに当る〉

12593:              去る者は追わず》

12594: 身を失う者は〉好んで危の地に立つ〉

12595: 義を失う者は》好んで利の所在に就く》

12596: 好んで危の地に立つ者は〉之を如何ともす可き者に於て〉

12597: 而も之を如何ともせず〉

12598: 好んで利の在る所に就く者は》之を如何ともす可からざる者に於て》

12599: 将に之を如何ともせんとす》

12600: 慾を縦にして養を忘る〉

12601: 情を蕩にして身を忘る》

12602: 難を見て散ず〉

12603: 利を逐いて聚る》

12604: 得喪存亡は。則ち同じからずと雖も。而も正を失するは則ち同じ。

12605: 有する者は〉徳なり〉

12606: 発する者は》道なり》

12607: 車を推す者は之を竪にす〉

12608: 布を織る者は之を横にす》

12609: 物の則を有する所以なり。

12610: 無意なる者は〉自ら道に随う〉

12611: 有意なる者は》則に由ら使む》

12612: 則に由るは〉之を修と謂う〉

12613: 則を棄るは》之を荒と謂う》

12614: 君子は未だ其の荒を以て。道徳と為さず。是の故に。

12615: 道と随う者は〉天福を得る〉

12616:  高を極むる者は〉足を立つるに難し〉

12617:  満を持する者は》手に失するに易し》

12618:  美味は毒を含む〉

12619:  美器は禍を載す》

12620:  其の禍機を熟察すれば。則ち

12621:  奚んぞ鴆を玉饌に和し〉

12622:  火を錦嚢に裏むに異ならん》

12623:  貧富は相い従う〉

12624:  貴賎は相い伴う》

12625:  富貴は何ぞ必ずしも之を天福と謂わん。是の故に。

12626:  痒を掻きて痛快と呼ぶ〉惟だ同病の人のみ之に和す〉

12627:  ※を羹にするも亦た聊か足れり》独り爽口の人のみ之を愍む》 (※=かく、羹=こう、

12628:  苟くも地の為に遷され〉                        聊か=いささか)

12629:     物の為に転ぜらるれば》則ち烏んぞ          (烏んぞ=いずくんぞ)

12630:  其の憂楽する所を。憂楽することを得ん。

12631:  掻痒の快を楽しみ〉

12632:  羹※の味を憂うるは》此れ世人の憂楽なり。

12633:  其の天福を福とせず〉

12634:  其の人禍を禍とせず》

12635:  富貴に朶頤す〉                      (朶頤=だい)

12636:  歓楽に引涎す》

12637:  蔬食藍縷〉疾苦の地と為す〉

12638:  快意縦慾》得意の地と為す》夫れ

12639:  名誉は人を動かせば〉則ち人は必ず垢を洗いて瘢を求む〉

12640:  功業は世を蓋えば》 則ち世は必ず膽を墜して後を畏る》

12641:  甘と雖も毒を含む〉

12642:  美と雖も禍を載す》

12643:  未だ其の道に達せず。而して

12644:  毒は饌より出で〉火は嚢より発すれば〉則ち悟ると雖も亦た既に晩し。

12645: 勢と忤う者は》人禍に遇う》

12646:  君子は間暇を従容す。

12647:  道に離れず〉

12648:  勢に忤わず》

12649:  如し二者を全うすることを得ざれば。則ち勢を問わず。

12650:  志士は〉激励憤発〉守を遜にして勢に処すること能わず〉

12651:  身を殺して義を害する有り〉

12652:  怯者は》勢を畏れて邪正を問う無し》

12653:  利者は》勢に走りて可否を問わず》

12654: 天禍を安んじ〉人福に矜らざるは〉 君子の恬なり〉      (矜る=ほこる)

12655: 人福に喜こび》天禍に安んぜざるは》小人の操なり》

12656:  天人。機は常に触れ。勢は常に走る。故に

12657:  人と無く。物と無く。智愚と無く。強弱と無く。

12658:  紛若として此の中に遊ぶ。

12659:  道なる者は〉徳の発なり〉

12660:  徳なる者は》道の有なり》

12661:  勢なる者は〉力の走る所なり〉

12662:  力なる者は》勢の立つ所なり》

12663:  天人は各おの然り。故に

12664:  徳は至れりと雖も〉而も勢に拠らずば則ち困す〉

12665:  道は正なりと雖も》而も力 無ければ則ち窮す》惟だ

12666:  上なる者は〉宜しく之に拠るべし〉

12667:  下なる者は》宜しく之に従うべし》

12668:  宜しく之に拠るべくして〉而して之を縦にすれば〉則ち上下の情離る〉

12669:  宜しく之に従うべくして》而して之を竊めば》  則ち上下の道乱る》是を以て。

12670:  道を舎てて勢に従えば〉廉恥の心を用うる所無し〉

12671:  道を離れて勢を弄せば》縦肆の慾を逞しくせざる所無し》

12672:  道に厭飫し〉勢に従容たれば〉則ち処に随いて楽しむ〉

12673:  勢に揣摩し》道に婆娑たれば》則ち楽地有りと雖も》得て安んぜず》故に

12674:  勢力に事うる者は〉道を見ず〉               (事うる=つかうる)

12675:  道徳を修むる者は》勢を忘る》

12676:  勢は力を以て強し〉 故に理の上に於て伸び易し〉

12677:  理は道を以て明なり》故に勢の下に於て屈せず》

12678:  為に可否有り〉

12679:  遇に幸不幸有り》

12680:  為の可否は〉 素より事の前に於て定まる〉

12681:  遇の幸不幸は》更に 事の後に於て定まる》

12682:  為す者は預めす可く〉

12683:  遇う者は預めす可からず》

12684:  預め遇う者を謀れば〉

12685:  可否を択ぶに意無し》

12686:  預め為す者を択べば〉

12687:  幸不幸を問うに遑あらず》故に               (遑=いとま)

12688:  遇う所の幸不幸の跡を執り〉

12689:  為す所の可否の実を察せず》

12690:  毀誉是非する所。未だ声主の道を得ず。故に

12691: 有意に務めて〉而して無意に任す者は〉天を怨まず〉

12692: 有作に務めて》而して有為に受く者は》人を尤めず》

12693:  致す者は〉我が機なり〉

12694:  至る者は》他が機なり》故に

12695:  諸を人に在るの機に求めず〉而して

12696:  己よりするの機に慎しむ》

12697:  苟くも此の機を察せざれば。則ち

12698:  過を己に於て恕す〉

12699:  備を人に於て求む》

12700:  柔を責むるに剛を以てす〉

12701:  剛を責むるに柔を以てす》是れ乃ち人を尤むるなり。

12702:  人なる者は〉有意にして為す〉

12703:  天なる者は》無意にして成す》故に

12704:  殺活与奪の為〉

12705:  死生通塞の成》參差にして遇す。豈に天を怨まんや。

12706:  道を履めば〉則ち仰ぎて※る無し〉             (※る=はじる)

12707:  徳を修めば》則ち内省して疚しからず》

12708:  是れ乃ち天を楽しむ者なり。

12709: 履むや則に循す〉遇は焉んぞ正ならざらん〉

12710: 履むや則に失す》遇は焉んぞ非ならざらん》惟だ

12711: 目病めば則ち乱花を大虚に於て看る〉

12712: 耳病めば則ち蝉噪を空漠に於て聴く》窺Eの病いを為すなり。

12713:  福は必ず善人に於てし〉

12714:  禍は必ず不善人に於てするか〉否なり〉

12715:  福は果して善人に於て期せず〉

12716:  禍は果して不善人に於て期せざるか》否なり》

12717:  蓋し天人は各おの其の所能を有す。惟だ

12718:  能く天を転して人を為す〉其の有意を以て〉而して

12719:  喜怒愛憎〉殺活与奪は〉是れ人の所能なり〉

12720:  惟だ人を容して天を成す》其の無意を以て》而して

12721:  聚散往来》死生通塞は》是れ天の所能なり》

12722:  憎みて其の亡びんことを思う〉

12723:  愛して其の栄えんことを思う》

12724:  縦使其の事の正に出づるも。亦た有意の私なり。       (縦使=たとい)

12725:  況んや其の未だ全く正に出でざるをや。

12726:  無意を窺うに〉

12727:  有意を以てす》故に

12728:  報応に惑い。又た其の必とし難きに疑う。

12729:  無意にして為す者は〉天なり〉

12730:  無作にして成す者は》誠なり》

12731:  往して停せざる者は〉勢なり〉

12732:  来して当する者は》 時なり》

12733:  往して回らす可からず〉

12734:  当して避ける可からず》是を以て。

12735:  機を転し勢を回らす者は〉人の能なり〉

12736:  機転し勢回る者は》   人の能とする所に非ざるなり》是の故に。

12737:  死生通塞なる者は〉 天なり〉

12738:  之を死し之を生し〉之を通し之を塞す者は〉気なり〉

12739:  死生通塞を致す者は》人なり》

12740:  今将に一定の理数報応を以て。以て命を論ず。

12741:  弁懸河の如しと雖も。識者惑わざるなり。

12742: 或いは有意を天に於て望み。或いは禍福を理に帰す。

12743: 或いは諸を自使に偏にし。為成の分に罔し。而して天命の事に惑うなり。

12744: 慎みて天人を弁ず〉

12745: 能く 致至を分す》

12746: 熟しく之を古に稽う〉               (熟しく=くわしく。稽う=かんがう)

12747: 深く 之を今に量る》

12748: 可否を知りて〉

12749: 損益を審にす》                  (審=つまびらか)

12750: 衆の 好悪する所を察す〉

12751: 百家の是非する所を考う》

12752: 能く体し能く忖る〉                (忖り=はかり)

12753: 容るること広く択ぶこと審にして》

12754: 諸を事物に推して謬らず〉

12755: 諸を天地に試みて差わず》

12756: 権は経に合し。義は宜に適す。礼中し。智通し。用活し。応変し。

12757: 内に於て有する者は安んず〉

12758: 外に於て行する者は歉たり》            (歉=けん)

12759:  有する者は発す〉

12760:  発すれば則ち行す》

12761:  有する者は〉徳なり〉

12762:  行する者は》道なり》

12763:  天は無意を徳とし〉成を道とす〉

12764:  人は有意を徳とし》為を道とす》

12765:  人は〉為して成する能わず〉

12766:  天は》成して為する無し》故に

12767:  君子は為に務めて〉成に謀らず〉

12768:  小人は成に求めて》為に務めず》

12769:  成るを求めて為す者は〉悔いること多し〉

12770:  為して成るを望む者は》尤めること多し》

12771:  意は善悪を統ぶ〉

12772:  為は邪正を具す》有す宜くして有す。

12773:  行う宜くして行う。而して後 君子の道徳なり。是の故に。君子は。

12774:  人の同じく欲せざる所の者を徳とせず〉

12775:  己の独りする所の者を   道とせず》

12776:  人の同じく欲する所を得れば〉則ち其の徳や美なり〉

12777:  己の独りする所に由れば》  則ち其の道や偏なり》

12778:  嘉穀美材有りと雖も。耘※潅培せざれば。則ち成らず。故に   (耘※潅培=うんしかんばい)

12779:  道徳も修めざれば。我の所謂道徳に非ず。

12780:  修とは。耘※潅培の謂なり。耘※潅培せざれば。則ち長ぜず。

12781:  如し果して長ぜざる可くんば。則ち孰れか敢て耘※潅培せん。

12782:  内交外修して。而して偏廃せず。

12783:  安んぞ之を有し。正しくして之を行わん。

12784:  耘※潅培の功 大なり。

12785:  修を観て目して偽と為る者は有り〉是れ

12786:  将に秕※を甘んじ食いて〉而して耘※潅培に荒せんとす〉    (秕※=ひえん)

12787:  修を以て聖を誣うる者有り。

12788:  将に※樟の天に参するを禾苗に於て望まんとす》        (※樟=よしょう)

12789:  有する者は己に足れば〉則ち外に務めて物に徇わず〉

12790:  行なう者は則に循えば》則ち荊棘を披き》岸崖を冒さず》

12791:  徳や〉諸を天地に求めて〉有らぬ所無し〉

12792:     諸を毛髪に尋ねて〉得ざる所無し〉

12793:  道や》諸を宇宙に放ちて》行せざる所無し》

12794:     諸を涓埃に置きて》発せざる所無し》

12795:  天地は既に之を舍つること能わず〉

12796:  鬼神は安んぞ之を外にす可き》

12797:  物有れば必ず則有り。則なる者は理故の所在。

12798:  則を得て徳 成す〉

12799:  則に由て道 立す》

12800:  得を以て徳を為す〉猶お善悪の心に戦うなり〉故に

12801:  成徳なる者は〉之を己に於て有する在り〉

12802:  由を以て道と為す》猶お邪正の前に争うなり》

12803: [故に道に達する者は己よりして行うに在り〉]

12804:  得なる者は宜しく択ぶべし〉

12805:  由なる者は宜しく審にすべし》

12806:  有する者は宜しく養うべし〉

12807:  行する者は宜しく慎しむべし》

12808:  仁者は〉得て之に居る〉

12809:  義者は》由て之を行う》

12810:  智者は之を知る〉

12811:  能者は之を能す》

12812:  之を得んと欲して教を信ぜず〉

12813:  之に由んと欲して則を求めず》              (由んと=よらんと)

12814:  志は則ち是なり〉

12815:  為す所は則ち非なり》故に

12816:  之を得て之に由るは〉問学に在り〉

12817:  之を有し之を行うは》自達に在り》而して

12818:  徳は衆を安んずるより大なるは莫し〉

12819:  道は物を済すより  大なるは莫し》天下の成功なり。    (済す=なす)

12820:  夷険は一ならず〉

12821:  情態は各異なるなり》故に

12822:  大道は小道を廃せず〉狭斜隘巷も〉以て資する所有り〉

12823:  大徳は小徳を舍てず》※※※※も》以て用する所有り》惟だ

12824:  沾沾として小徳に甘んじ〉

12825:  規規として小道を求む》大人は為さず。

12826:  涼徳は人を害す〉故に之を懲す〉

12827:  左道は衆を惑す》故に之を塞ぐ》

12828:  左道 塞がれば〉則ち衆望正し〉故に済物の功立つ〉

12829:  涼徳 懲すれば》則ち衆害弭む》故に安衆の沢成る》故に

12830:  之を以て勢に拠る者は〉 大に制作して以て化を世に被る〉礼楽は是に於てか成る〉

12831:  勢無くして之に任す者は》能く祖述して以て教を後に垂る》法度は是に於てか伝わる》

12832:  制作する者は〉君の事なり〉

12833:  祖述する者は》師の任なり》

12834:  之に志す者は〉志士なり〉

12835:  之を為す者は》聖者なり》

12836:  損益を知らざる者は〉制作する能わず〉

12837:  小大を弁ぜざる者は》教を垂ること能わず》故に

12838:  人をして雍雍の化を被ら使めざるは〉君の不能なり〉

12839:  人をして正大の道を履ま使めざるは》師の不良なり》故に

12840: 天を知り命を知るは〉学者の務めなり〉

12841: 命に安んじ天を楽しむ者は》聖者の事なり》

12842: 事に於て聖に従わずんば。難きかな免かれんことを。




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