11548: 動転止持は。境を清濁に於て分す。 11549: 清境なる者は〉神 天に雌なり〉 11550: 濁境なる者は》神 天に雄なり》故にに。 11551: 転中は変動に由りて定す〉 11552: 持中は定常に由りて変す〉故にに 11553: 道に為成すれば〉則ち天神と曰う〉 11554: 情に感応すれば》則ち鬼神と曰う》 11555: 情道は声を異にすと雖も。其の主は一なり。 11556: 神は雌なるを以て〉而して為成は天事を為す〉 11557: 神は雄なるを以て》而して感応は地事を為す》故に〉 11558: 地はGHして〉而して東規南北し〉 11559: 日は南北して〉而して地物発収すれば〉則ち 11560: 天は其の感応を成すなり〉 11561: 日は順行して》而して冬夏斯に成し》 11562: 日は逆行して》而して昼夜斯に成すれば》則ち 11563: 神は其の為成に従うなり》是の故に。 11564: 天中の為は〉則ち神 天に於て聴す〉 11565: 地中の成は》則ち天 神に於て従す》故に。 11566: 天物の態は〉則ち錯行して其の体を軋せず〉気気は相い交し〉感応は常有り〉 11567: 地物の態は》則ち錯行して其の体を軋せず》気物は交接して》感応は常無し》是を以て。 11568: 地なる者は穢濁にして。彩声臭味を醸す〉 11569: 交接生化を事す》是を以て。 11570: 濁境にして。而して事物錯綜し。鬼神変化の府を為す。 11571: 濁境の並立は。一動一植なり。 11572: 天に於ては則ち同資と雖も〉而も 11573: 物に於ては則ち分有り》 11574: 植に於ては〉則ち運用を無意に於て給す〉 11575: 動に於ては》則ち運用を有意に於て給す》 11576: 給せらて意を有す〉而して 11577: 給する者は則ち無意なり》 11578: 反して合なる者を観る。故に。 11579: 彩声臭味の境。 11580: 交接生化の地。 11581: 舎意有意。其の間に相依す。 11582: 有意は。内に其の意を有す〉 11583: 外に其の技を発す》 11584: 意は。則ち思惟分弁。愛憎欲悪なり。 11585: 我れは我が境を開きて。人の天地を立す。 11586: 愛憎欲悪は〉物と類す〉 11587: 思惟分弁は》物に長ず》 11588: 思惟は〉意なり〉 11589: 分弁は〉智なり〉之を合して心と為す〉 11590: 愛憎は》情なり》 11591: 欲悪は》慾なり》之を合して性と為す》 11592: 心性は相い和すれば。則ち其の情慾も。亦た物と異なるなり。故に 11593: 人心の適否は。離合の勢を作す。 11594: 合すれば則ち億兆 心を結ぶ〉而して上下和同す〉 11595: 離るれば則ち天下 心を散ず》而して彼此乖戻す》是を以て。 11596: 等は貴賎を弁ず〉 11597: 類は親疏を弁ず》 11598: 天に順じて其の則を奉す〉 11599: 人に由りて其の道を立す》 11600: 衆を安んずるは〉人の大功なり〉 11601: 自ら安んずるは》我の広居なり》是を以て。 11602: 人は。其の分を守る〉 11603: 其の職を勤む》 11604: 分を守らざれば則ち※乱す〉 (※乱=ふんらん) 11605: 職を勤めざれば則ち荒廃す》 11606: 職に士農工賈有りと雖も。而も 11607: 上は一人より〉下は億兆に至るまで〉造化を賛するを以て職と為す〉 11608: 上は一人より》下は億兆に至るまで》其の地を守るを以て分と為す》 11609: 天功を貪り〉天物を費す〉之を汰と謂う〉 11610: 人功を偸み》人物を費す》之を賊と為す》 11611: 仁義学礼は〉道の綱なり〉 11612: 殺活与奪は》政の柄なり》 11613: 鰥寡孤独は之を愍む〉 11614: 士農工賈は之を用う》 11615: 才良を甄抜す〉 11616: ※賊を沙汰す》 11617: 水にして之れに舟し〉渓にして之れに梁す〉 11618: 春にして之れを啓き》秋にして之れを閉づ》故に。 11619: 人の志ざす所は〉則ち家国安寧なり〉 11620: 人の弁ずる所は》則ち尊卑親疏なり》 11621: 天功を貪らざれば〉則ち欺を用うる所莫し〉 11622: 天物を費さざれば〉則ち奢を用うる所莫し〉 11623: 人功を偸しむ者は》勤を用うる所莫し》 11624: 人物を費やす者は》倹を用うる所莫し》夫れ 11625: 人は交接広しと雖も。人際は之を務め。余力は物に及ぼす。道の序なり。 11626: 人際は広しと雖も。望衆自修に過ぎず。 11627: 自修は惟だ厳なれ〉 11628: 望衆は惟だ寛なれ》蓋し夫れ 11629: 人の生を為す。善悪正邪〉 11630: 智愚利鈍》共に天より来たるなり。 11631: 造化を賛するを以て心と為さば。人を安んずるに於て愉び〉 11632: 人に通ずるに於て楽しむ》 11633: 安を欲する者は〉其の危きを安んじ〉其の覆えるを扶く〉 11634: 両全たること難きを以て〉 而して其の莠を鋤し〉其の苗を培う〉 11635: 通を欲する者は》其の塞を啓き》 其の蔽を通す》 11636: 尽く通すること難きを以て》而して其の情を疏し》其の弊を懲す》 11637: 君師の任なり。 11638: 父〉則ち家にして君なり〉 11639: 君》則ち国にして父なり》故に。 11640: 慈は以て子を愛す〉 11641: 孝は以て父を敬す》 11642: 孝慈なれば〉安んぜざるの家無し〉 11643: 愛敬なれば》安んぜざるの国無し》 11644: 学に於て之を知る〉 11645: 礼に於て之を修む》 11646: 才徳は。艸木の異類別能なるが如し。故に。 11647: 啻に人に於て其の才徳を知るのみならず〉 11648: 身に於ても亦た宜しく其の才徳を揣るべし》故に。 (揣る=はかる) 11649: 力を伸ばし〉済物に於て務め〉 11650: 能わざれば則ち退きて自ら善しとす》故に 11651: 大人は〉国を量りて用う〉 11652: 小人は》腹を量りて食らう》 11653: 人をして尽く己れの向かう所に向わしめんと欲する者は〉癡なり〉 11654: 人をして尽く己れの欲する所に欲せしめんと欲する者は》仁なり》夫れ 11655: 衆智は。明に乏しく〉通に病む》 11656: 耿耿を得て明と為し〉 11657: 滴滴を得て通と為す》 11658: 迷悟混淆し〉真妄朦朧す》故に 11659: 智の事は。之を廓にするに天を以てす。 11660: 天は万物を成す〉 11661: 神は万神を用す》 11662: 物 万なれば則ち其の形も万なり〉 11663: 神 万なれば則ち其の情も万なり》 11664: 万なる者は一に資す〉 11665: 一なる者は万に給す》故に原は一にして派は別なり。 11666: 同じと雖も亦た異なる。蓋し天地なる者は。大物なり。 11667: 然りと雖も猶お且つ相い依して給資す。 11668: 一一はBCす。万の神物。其の間に成す。而して 11669: 人は其の一に居す。故に一元気より之を観れば。 11670: 天地水火は〉変して雲雷雨雪に之く〉 11671: 水陸動植は》砕して菌寓虫豸に至る》 11672: 偕に我の與るに非ざる莫し。而して (與る=あずかる) 11673: 雲雷雨雪は〉水火に属す〉 11674: 風恬山壑は》天地に属す》則ち 11675: 此の為具に於てBCす。而して醸成する者は。動植なり。然り而して 11676: 天地水火は〉則ち清浄の府に居して〉循環の生を活す〉 11677: 水陸動植は》則ち穢濁の境に居して》鱗比の生を活す》 11678: 鱗比は生を堅Kに於て立す〉 11679: 意を有無に於て活す》故に。 11680: 我より類を分すれば〉則ち大に異なると雖も〉而れども 11681: 天より物を成すれば》則ち合して一を成す》 11682: 天の此の生を醸する。植は本気に資するに勝る〉 11683: 動は神気に資するに勝る》 11684: 其の分する所は。乃ち有意無意なり。 11685: 動植は。意に於ては則ち有無すと雖も。而も 11686: 生に於ては則ち彼此同じ。故に 11687: 其の所謂体用性才は。彼此同じく之を有す。而して 11688: 其の有する所の態は則ち同じからず。故に 11689: 天に天物精神と曰う者は〉 11690: 我に身生心性と曰う》 11691: 天に精霊鬼神と曰う者は〉 11692: 我に情慾意智と曰う》是を以て 11693: 其の用のBC給資は〉 11694: 性の保持立役なり》 11695: 声を以て之を求むれば〉則ち若く混焉たりと雖も》而も 11696: 態を以て之を察すれば》則ち天人異なるなり》 11697: 既已に態を異にすれば則ち其の技は何ぞ又た同じからん。 11698: 万物のBCの間に於て醸する。生なる者は〉天の営なり〉 11699: 育なる者は》與の養なり》 11700: 天地はBCして。水を成し火を成す。 11701: 水火は天地を隔すと雖も。而も 11702: 同じく其の地に立す〉 11703: 同じく其の天に居す》 11704: 水は火を食すに於て育す〉 11705: 火は水を食すに於て育す》 11706: 動植は又た其の間に醸す。散して万品を為す。 11707: 又た用を天地水火に於て資す。故に 11708: 人の境より之を言えば。其の斯の世に寓するや。 11709: 之を無意の天に於て資す〉 11710: 之を有意の物に於て成す》 11711: 地に立す〉 11712: 天に居す》 11713: 水に於て液す〉 11714: 燥に於て煦す》 11715: 並立する者と。相い依りて與を為す。是を以て 11716: 神は保運化持に於て活す〉 11717: 気は声色臭味に於て交す》 11718: 物は配嗣器地に於て立す〉 11719: 質は飲哺便溺に於て依す》 11720: 保する者は〉天の給する所に資す〉外より内を衛護するなり〉 11721: 運する者は》與の通する所に依す》内より外を営養するなり》故に 11722: 物の始めて生ずる。 11723: 目は未だ色を弁ぜず〉耳は未だ声を弁ぜず〉 11724: GHは直ちに通ず》乳哺は従って弁ず》 11725: GHは未だ足らず〉外は羽毛鱗甲を以てして保す〉 11726: 乳哺は未だ足らず》他の艸木鳥獣を假りて養う》 11727: 人なる者は。神気に長じて〉而して 11728: 本気に不足す》 11729: 神気の有余を以て〉 11730: 本気の不足を補う》 11731: 飲啄の養は〉水火の調を待ちて食らう〉 11732: 羽毛の防は》布帛の工を假りて補なう》 11733: 尚お猶お足らず。宮室を為し。城郭を営し。 11734: 医薬を為し。鍼※を用す。夫れ 11735: 物の剖析して散するや。 11736: 散すれば則ち尽く変す。故に 11737: 之を植と謂えば則ち一なり〉植に就きて之を析けば〉則ち有らざるの形無し〉 11738: 之を動と謂えば則ち一なり》動に就きて之を析けば》則ち有らざるの物無し》故に 11739: 人の有意を以て長を天地の間に於て恃む。亦た万変中の一態なり。 11740: 其の意技を以て。能く自ら天地間に於て貴しとす。 11741: 天の人を私するに非ざるなり。 11742: 天の人を私するに非ざると雖も。而も 11743: 天に於て資する所の意技を以て。 11744: 能く自ら天地間に於て貴きを得る。故に其の稟や。 11745: 本気に雌なり〉 11746: 神気に雄なり》 11747: 能く其の雄を取り〉 11748: 以て其の雌を補う》故に 11749: 服御の用は広し〉 11750: 調和の求は冗なり》是に於て。 11751: 地を墾して穀を取り。海を煮て塩を取る。 11752: 艸木土石〉見れば則ち取りて以て之を材にす〉 11753: 其の材に当らざる者は〉之を糞壌に用う〉 11754: 鳥獣魚鼈》遇えば則ち殺して之を啗う》 (啗う=くらう) 11755: 其の啗う可からざる者は》之を服飾に当てる》 11756: 竟に其の力を恃み天地を取りて。以て己れの有と為す。夫れ 11757: 人は己れれの境を開きて。以て己れを貴しと為す。 11758: 終に其の智を以て。以て天を窺う。 11759: 人の身は〉万物中の一物にして〉而して 11760: 其の意は》万神中の一神なるを知らず》 11761: 以て天独り人に私すと為す。蓋し 11762: 人技は〉巧みと雖も亦た惟だ人の巧む所に於て巧みなり〉 11763: 人意は》長ずと雖も亦た惟だ人の長ず所に於て長ずなり》 11764: [人の意は〉鼓舞に巧みと雖も〉亦た惟だ人の巧む所に於て巧みなり〉而して 11765: 其の意は》思弁に長ずと雖も》亦た惟だ人の長ず所に於て長ずなり》] (写本939を示す。) 11766: 諸を其の並立する所に方れば。 11767: 互いに工拙通塞有り。 11768: 若し之を傍観せしめば悪んぞ群才に抽して跳出するを視ん。夫れ 11769: 無意の境を為すは。廼ち清浄の府なり。 11770: 其の無意を以て〉以て善悪愛憎を畜えず〉 11771: 其の清浄を以て》以て声臭配嗣を用いず》 11772: 天人の反なり。反せざれば合せず。 11773: 合せざれば則ち天地支離す。 11774: 死生を観て〉而して天地に融せず〉 11775: 無意を観て》而して有意に反せず》 11776: 造化中より己れを観て。己れより造化を観る。 11777: 魚は躍って水を出でず。賊を養い其の子を逐う。夫れ 11778: 人なる者は。生を濁穢に於て資す〉 11779: 物を鱗比に於て成す》 11780: 養うに並立の與に依れば。則ち 11781: 声色臭味・配嗣器地に求めざること能わず。 11782: 多智多技を以て。用広く求冗なるに遭う。 11783: 物に遇いて殺さざる所無ければ。則ち其の殺を嗜むや。虎狼より熾んなり。 11784: 修飾して以て垢穢を掩えば。則ち其の不浄や。鳥獣より甚だし。 11785: 而して妄惑の念も。亦た人より甚しきは莫し。夫れ 11786: 麝臍を屠りて。魚腸を醢にす。 11787: 狗の臭を逐い。鳥の穢を貪ると奚んぞ択ばん。 11788: 故に人と物と各おの其の境を開すれば。 11789: 則ち其の美醜も亦た各おの其の愛憎に従う。故に 11790: 思想技巧の運〉之を無為の巧に比ぶれば〉則ち惟だ其の煩を観〉 11791: 羽毛骨角の美》之を清浄の府に納むれば》則ち唯だ其の穢を観るのみ》是を以て。 11792: 人の境を開す。 11793: 其の思慮知弁。愛憎欲悪を以て。其の技を施す。故に。人なる者は。 11794: 物に通するの智有るを以て。終に通ぜざるの智を有す。 11795: 事を決するの断を以て。還って不断の惑を抱く。 11796: 沾沾の窺Eを好み〉 11797: 反合の達観に罔し》 11798: 欲は求むる所有り〉 11799: 智は労する所有り》 11800: 鳥を※にし獣を檻にし。味を調し服を文る。之を己れに営して足らず。 11801: 亦た之を類に求む。有力は無力を執え。駆使鞭苔す。 11802: 之をして稼せ使む〉而して其の粋を食う〉 11803: 之をして織ら使む》而して其の精を衣る》 11804: 其の粋を食い〉其の精を衣る者は〉則ち君為り〉 11805: 其の糲を食い》其の麁を衣る者は》則ち民為り》是に於て。 11806: 有力は〉自ら衣食すること能わず〉奉を民に恃る〉 (恃る=よる) 11807: 無力は》自ら守禦すること能わず》保を君に依る》 11808: 君民は工を通じ。相い共に奉保す。以て迭に其の役を執る。故に 11809: 民は其の君に奉ずるを職とす〉 11810: 君は其の民を保するを職とす》而して 11811: 民は君に格いて悛せず〉 11812: 君は民に取りて已まず》 11813: 下なる者は則ち誅せらる〉 11814: 上なる者は則ち移せらる》故に 11815: 天人なる者は反を以て合一す。夫れ反の態を為す。 11816: 彼に没する者は〉此に露す〉 11817: 此に隠する者は》彼に見す》 11818: 之を一に資すると雖も〉而も 11819: 二に反す》是の故に。 11820: 善悪に悦怨し〉 11821: 是非に分弁するが如きは》 11822: 惟だ意の有する所にして。而して天は與らざるなり。是の故に。 11823: 天の神為〉 11824: 人の意作》 11825: 其の態は固より反す。惟だ其の資するや応する有り。故に 11826: 天に卑高を有す〉人は資して尊卑の態を為す〉 11827: 天に親疏を有す》人亦た親疏の態を為す》蓋し 11828: 水火なる者は〉兄弟なり〉人は観て以て疏と為す〉 11829: 水魚なる者は》疏属なり》人は観て以て親と為す》蓋し 11830: 人の倫は。之を約すれば。則ち親疏尊卑なり。 11831: 夫婦は〉則ち疏より親に来たる〉 11832: 兄弟は》則ち親より疏に之く》 11833: 親より以上は〉我より尊を為す〉 11834: 子より以下は》我より卑を為す》 11835: 家を国に推せば〉則ち君民即父子なり〉 11836: 己を物に推せば》則ち万物皆同胞なり》是の故に。 11837: 人性は自ら奉戴臨御の意を有す。 11838: 夫の造化感応の為を観て〉以て神道を建て〉 11839: 始を感じ本を思うの心を以て》以て祭祀を設く》 11840: 是の故を以て。人は能く天を尊び地を卑しむ。噫。 11841: 高下は〉天なり〉 11842: 尊卑は》人なり》 11843: 天は人の之を仰ぐが為にして〉尊からず〉 11844: 地は人の之を臨むが為にして》卑しからず》 11845: 且つ姑く天地の体に就きて之を言わんか。夫れ 11846: 戴する所を奉す〉 11847: 履する所に臨す》人の態なり。而して 11848: 人は能く天を戴し地を履すれば。則ち尊卑は我より定まる。故に 11849: 枢紐は極を守る。衆象は之に共す。是に於てか。 11850: 帝所に擬す可し。地の穢濁を受けて。至卑に居すと懸隔す。 11851: 若し全天地より之を観れば。則ち 11852: 人物は則ち立して地を履す〉 11853: 天象は則ち循して地を拱す》 11854: 人は極辰を尊ぶと雖も。亦た惟だ中の両端なり。然れば則ち 11855: 地物は天を戴す〉 11856: 天象は中を奉す》 11857: 中外は未だ高卑を定めず。如何んぞ果して尊卑を定めん。 11858: 如し惟だ其の鬼神造化を索むれば。天地は有せざる所無し。此の故に。 11859: 天神は尊卑の囿する所に非ず。 11860: 人は天神に囿せらる。囿せらるるを以て。而して 11861: 敬仰を此に用うる有り。 11862: 人は弾丸の地に環居し。洲壌を画して。各おの其の国を為し。 11863: 各おの其の君臣を設け。各おの其の衣冠を製す。 11864: 意匠の営する所。其の用は則ち一にして。而して 11865: 其の巧は変化す。是の故に。其の天神奉戴の意は則ち同一なり〉 11866: 天神奉戴の設は則ち各異なり》 11867: 泥塑木偶。人を以て体を建つるなり。 11868: 鐘鼓犠牲。人を以て之を饗するなり。 11869: 賞善罰悪。人を以て之を望むなり。 11870: 宮室几筵。人を以て之を安んずるなり。 11871: 天徳の洪蕩〉我を眷するに意無ければ〉則ち亦た我を棄つるに意無し〉 11872: 惟だ天道のIわざる》経は一須臾を失せざれば》則ち 11873: 緯も亦た一秋毫を遺さず》 11874: 明を以て著を為さず〉 11875: 冥を以て晦を為さず》 11876: 上より臨むに厳なり〉 11877: 傍より観るに察なり》 11878: 其の微をして顕なら使む〉 11879: 其の長をして消なら使む》 11880: 惟だ誠の在る所にす。故に天徳は未だ私する所有らず〉 11881: 天道は未だIう所に有らず》 11882: 天地に天神たる者は。像形に寓せず。 11883: 祭祀に食せず。 11884: 善悪黜陟を用いず。 11885: 明暗幽明をIわず。 11886: 物物は並立す〉 11887: 神神は相交す》 11888: 往来酬醋し。感応は鬼神を見す。 11889: 鬼神の態は。向かう。背く。順う。逆らう。有り。無し。存す。亡す。 11890: 意を以て之を索むれば〉能く意外に遊す〉 11891: 常を以て之を求むれば》常中に居せず》 11892: 人は。此の如く思弁を有す〉 11893: 此の如く技巧を行す》 11894: 此の思弁技巧を以て。意外に遊び。常中に居らざる者を索む。 11895: 其の不測に惑いて。而して得可からず。竟に人を提げて漸む。漸んで已まず。 11896: 私偽を執る〉 11897: 公誠を談ず》 11898: 知解は愈いよ巧む〉 11899: 蠱惑は益ます深し〉 11900: 之を通するに人を以てす》 11901: 小物の大分は。廼ち一動一植なり。是に於て。 11902: 植の無意は〉天に異なる有り〉 11903: 動の有意は》人に同じからず》 11904: 人の天地に於ける。其の有する所を有す〉 11905: 其の行する所を行す》 11906: 其の有は〉即ち有意の私なり〉 11907: 其の行は》即ち有作の偽なり》 11908: 我の有する所を以て。我の無き所を天に望む。 11909: 是に於て無意の公。不Iの誠を。天に於て観る。 11910: 是れ蓋し人を以て天に望むを以てなり。故に 11911: 公誠を天に得て。苟くも人を以て天に望まざれば。則ち 11912: 公誠を併せて失う。故に 11913: 公誠は則ち人に非ずと雖も。而も 11914: 人を以て天を食すなり。是を以て。 11915: 人を知らざれば〉則ち天を知らず〉 11916: 天を知らざれば》則ち人を知らず》 11917: 諸動は営営として。同じく意智情慾を用うと雖も。而も 11918: 我は則ち我の愛憎欲悪を以て。其の知解分弁を用う。 11919: 以て其の技巧を施す。人の性は。多く外に求む。 11920: 情慾を愛憎欲悪に於て運す〉 11921: 愛せば則ち護して其の長を望む〉 11922: 憎めば則ち厭いて其の消を願う〉 11923: 守禦を思慮知弁に於て技す》 11924: 愛憎は弁に動く》 11925: 安危は慮に運す》 11926: 是に於て群醜は連結して。勢は万里を動揺す。 11927: 彼の鳥獣と各各其の喜怒愛憎を行うと異なるなり。 11928: 且つ我れ神に長じ〉 11929: 本に薄きを以て》而して 11930: 水火土石。草木鳥獣。其の求むるや甚だ広し。 11931: 無意は禁ずる所無し〉 11932: 有意は恣に取りて有す》故に 11933: 勢の走る所は。国を君臣に於て建て〉 11934: 家を夫婦に於て成し》 11935: 尊卑を父子に於て分け〉 11936: 交際を師友に於て講ぜざるを得ず》 11937: 彼の鳥獣の如きは。乳に因りて唯だ所生を知り〉 11938: 乳を辞すれば則ち同胞を忘る》 11939: 人は則ち知りて之を弁ずる者有り〉 11940: 思いて之を慮る者有り》是に於て 11941: 親親は内に昵び〉 (昵び=むすび) 11942: 疏疏は外に会う》是に於て。 11943: 群醜は其の思弁を忘れ。各おの其の情慾を恣にす。 11944: 相い奪い相い食み。多知多求す。 11945: 勢は然らざるを得ざれば》則ち 11946: 教方を以て之を矜式せざる能わざるなり。蓋し 11947: 人心は。思えば〉則ち自ら安んずるを以て佗を苦しむに忍びざる有り〉 11948: 感せば》則ち苟生を以て其の辱に易えざる有り》 11949: 悦べば〉則ち之を奉戴せんと欲す〉 11950: 悪めば》則ち之を消滅せんと欲す》是れ乃ち。 11951: 物の無き所にして〉而して 11952: 人の有する所なり》 11953: 人は。此の性を以て〉此の勢に由り〉 11954: 此の心を以て》此の智を用す》 11955: 假え其の国をして境域を同じくせず。舟楫を通ぜざら令むとも。 11956: 人にして人の意を具せざる有らば。則ち知らず。 11957: 若し其の意を具する有らば。何に往くとしてか此の設無からん。 11958: 此の設は則ち有りと雖も。 11959: 人は窺Eの通惑を以て〉 11960: 技巧の異を用う》 11961: 教は一同ならず。月を指す所の地に於て争う。 11962: 教は一同ならず。月を指す所の地に於て争うと雖も。而も 11963: 各おの其の情慾を恣にし。相い奪い相い食らうが為に之を設くるは。則ち一なり。 11964: 小事を挙げて之を例するに。衣服飲食の如きは。 11965: 方に従い其の製を異にし〉 11966: 地を以て其の調を異にすと雖も》 11967: 饑寒の為に之を設くるは則ち一なるのみ。 11968: 人は窺Eの通惑に由りて。 11969: 己れを推して天を観て。智解すること一ならず。 11970: 技巧の之に同じきこと察せざる能わず。 11971: 故に規規として己れに同じからざるに吠ゆ。 11972: 我も亦た猶お其の中に居すなり。是の故に。 11973: 天地に観る者は。慣れたる所に執して〉慣れざる所を疑わず〉 11974: 習いたる所に党して》習わざる所に驚かず》 11975: 諸を天地に表して。而して依る可き者は。修を以て自ら安んじ〉 11976: 治を以て人を安んず》是の故に。 11977: 親疏尊卑の倫は〉之を天下に達す可し〉 11978: 士農工賈の利は》之を四海に通ず可し》 11979: 善悪は天より来たり〉 11980: 是非は智を以て分る》故に 11981: 人の世に処するに。 11982: 勢は此に事うること有らざるを得ず。 11983: 善を修め悪を除く〉 11984: 非を去り是に就く》 11985: 符を悦怨栄辱に於て合す。 11986: 姑く之を農に於て言うに。 11987: 苗の養を為し〉莠の害を為す〉天地は同じく之を有す〉 11988: 苗は則ち之を愛し》莠は則ち之を悪む》人は独り之を持す》 11989: 愛悪は奉棄の態を生ず。 11990: 奉養棄除。設施に当否有り。 11991: 設施は苟くも其の当を得ざれば。則ち 11992: 事と情と乖馳す。是の故に。 11993: 親は相い愛し〉疏は相い敬す〉通天下の情なり〉 (親=しん。疏=そ) 11994: 善は則ち賞し》悪は則ち懲す》通天下の義なり》是を以て 11995: 衆と安んぜんことを思う者は〉思う所を得て思う者なり〉 11996: 衆と利することを行なう者は》行う所を得て行う者なり》蓋し 11997: 地の草木を生ずる。形性千万なり。 11998: 以て柱梁と為す可し〉 11999: 以て椽桷と為す可し》 12000: 以て屋を葺く可し〉 12001: 以て席を織る可し》 12002: 以て饑寒を禦ぐ可し〉 12003: 以て痛痒を医す可し》 12004: 不斉の能なり。一の散して相い千万する。 12005: 人の才を成する亦た同じく其の中に在り。則ち 12006: 孰れか得て之を一にせん。 12007: 不一を以て。能く天下の用を済す。是の故に。 12008: 天下の道は〉愛敬に尽く〉 12009: 天下の楽は》安利に帰す》 12010: 学なる者は〉之を知る所以の者なり〉 12011: 礼なる者は》之を行う所以の者なり》 12012: 義なる者は〉其の宜なり〉 12013: 仁なる者は》其の安なり》 12014: 君なる者は〉此れを以て衆を御する者なり〉 12015: 臣なる者は》此れを以て君を輔くる者なり》 12016: 衆庶なる者は。此れを以て世に処する者なり。 12017: 善悪の天よりすると。天よりせざるとを争うに非ざるなり。 12018: 苟くも此に用いずんば。則ち衆情は適せず。天下は鼎沸す。是の故に。 12019: 天下の思行は。善悪是非にして。而して之を散ずれば。則ち其の情は千万なり。 12020: 噫。善にして情 適す〉 12021: 是にして智 感ず》 12022: 而るを奚んぞ又た或いは悪。或いは非なる。蓋し 12023: 思慮の念は〉自他 用を反す〉 12024: 是非の途は》智愚 一ならざるなり》是を以て。 12025: 悪は自ら処するに便なり〉 12026: 非は自ら弁ずるに可なり》 12027: 自ら便なりと雖も〉而も衆情に於て適せず〉 12028: 自ら可なりと雖も》而も憾を衆智に於て致す》 12029: 不適を以てして自ら適とす〉 12030: 致憾を以てして自ら是とす》 12031: 終に其の私に陥る。是の故に。 12032: 善是は則ち天下奉戴す〉 12033: 悪非は則ち四海厭棄す》 12034: 夫の各性の才を運し。各智の技を異にするが若きに至りては。是れ乃ち 12035: 天下の用を済す所にして。而して達者は好尚の一を衆に望まず。 12036: 将に保して之を持し。疏して之を通ぜんと欲するのみ。蓋し 12037: 生物の態は。美材は鮮少にして〉而して散材衆多なり〉 12038: 聡明は得難くして》而して聾瞽は群を成す》故に 12039: (編集による空白) 12040: 愚は衆く哲は孤なるは〉挙世の通態なり〉 12041: 自ら利し他を遺るるは》彼我の通病なり》是の故に。 12042: 天下の為に。教を立て道を設け。其の倫を正し。其の材を生ず。 12043: 自ら安んじ人を利す。各好は同を害せず。各才は交ごも用を済す。 12044: 是の若きのみ。是の故に。 (若き=ごとき) 12045: 褒賞通達は〉惟だ其れ栄利なり〉 12046: 鞭笞刀鋸は》皆な其の鍼※なり》 12047: 若し之を置きて教を立て道を開かんと欲するも。 12048: 高明幽玄に非ざれば。則ち愚に適し惑に応ずる者は。衆を安んずる者の用に非ず。 12049: 又た彼の衆を安んぜんと欲する者は。疏通保養を知らず。 12050: 夫の人をして好尚を斉しく使めんと欲するも。人を病しむるに過ぎず。 12051: 女子の粧を為すを見ずや。 12052: 髪は膏を以て其の黒を沢す。 12053: 面は粉を以て其の白を増す。 12054: 脣は臙脂以て其の紅を添う。 12055: 小事 以て大事を説く可し。 12056: 故に人道は其の性を※賊して以て之が器を為さず。是に於て 12057: 稲を水に種え〉 12058: 禾を陸に播す》 12059: 善く其の性に熟して。以て其の物を養う。是の故に 12060: 志業 自佗の安利に於て立つる者は。之を尚しと為す。 12061: 自ら安んず 孰れか妨げん。佗を安んずるに至りては。則ち 12062: 時有り 命有り。 12063: 勢有り 才有り。此に獲ざること有り。 12064: 退きて自ら善とす。思いて位を出でず。 12065: 謹んで其の分を守る。時に可否有り。 12066: 命は如何ともす可からず。勢は争う可からず。 12067: 才は天より得る有り。然れば則ち或いは能くし或いは能くせず。 12068: 苟くも其の道を得れば。天に於て良民たることは則ち一なり。是の故に。 12069: 或いは天命を楽しんで而して其の光を韜晦せる者有り。 12070: 或いは智を天地に融して。形骸相い忘るる者有り。是よりして下は。則ち 12071: 紛若尽くす所に非ざるなり。今 紛若の各態に居りて。 12072: 己れに於て同じからざる者を尤む。狗の人を尤むると同じきこと無きを得んや。 12073: 且つ人を以て天を観れば。天なる者は公誠にして。而して人なる者は私偽なり。 12074: 有意を離れて。善悪是非無ければ。則ち其の善悪是非は。乃ち 12075: 私偽中の事なり。之を天に法れば。則ち 12076: 以て其の公を成し〉 12077: 以て其の誠を成す》然りと雖も。 12078: 天は〉則ち無意して為し〉無為して成す〉 12079: 人は》則ち有意して作し》有為して成す》是を以て。 12080: 天は自ら天境を有す〉 12081: 人は自ら人境を有す》 12082: 人は已に人境を開く。亦た自ら人の義有り。 12083: 人は已に人境を開けば。又た天地と勢を張る。 12084: 事は亦た何ぞ天と一ならん。是を以て 12085: 人は其の智巧を以て。万物に勝りて直ちに上る。是に於て 12086: 天地も亦た己れの有と為せば。則ち 12087: 人 天地を食して。天地 翻りて人中に在らん。是の故に。 12088: 天地を以て之を観れば。虎狼の人を食うと〉人の虎狼に寝処すると〉 12089: 猪鹿の稼を侵すと》人の猪鹿の居を奪うと》奚んぞ択ばん。唯だ 12090: 人は其の境を開き。天地を取りて。我の有と為す。是に於て。 12091: 虎狼猪鹿は嫉む可し〉 12092: 牛羊鶏犬は愛す可し》 12093: 若し牛羊鶏犬をして。人の意を具せば。彼の人を観ること。 12094: 豈に人の虎狼猪鹿に於けるより異なりと謂わんや。是の故に。 12095: 慣れたる所に執し。習いたる所に党す。 12096: 未だ達と謂う可からざるなり。是を以て。 12097: 人の 人の境を開く。本気に於て乏しきを以て。 12098: 用を水火土木に資す。水火土木にして。而して足らず。 12099: 之を鳥獣魚鼈に資す。 12100: 天は公を以て》而して之を悪むに意無く〉之を愛すに意無し〉 12101: 人は私を以て》而して之を愛すに意有り》之を悪むに意有り》 12102: 人は己れを私するに塞がる。故に 12103: 我が好む所を潔とす〉 12104: 我が厭う所を穢とす〉 12105: 物の惨に怒る》 12106: 人の惨に恕す》 12107: 己れの境よりして然るなり。勢なり。 12108: 故に人は人境を開き。万物を取りて。以て己れの有と為し。 12109: 物を殺して用を通ぜざること能わず。 12110: 故に殺害の中。義を建て道を論ず。 12111: 人の事なり。天に非ざるなり。蓋し 12112: 人を以て天を知る〉反せざれば則ち得ず〉 12113: 人を以て人を知る》推せざれば則ち得ず》 12114: 反比の分なり。 12115: 苟くも思い此に至らざれば。 12116: 将に天に罔くして。而して人の義に誤まらんとす。 12117: 人事に切ならざるを以て。人事の急と為す。 12118: 噫 人にして人に切なる。彝倫を外にして何ぞ。 12119: 明は進照に巧にして〉反照に拙なり〉 12120: 情は自ら恕するに便にして》人を律するに刻なり》故に 12121: 辱は背に燭し〉禍は睫に巣くう》 12122: 始に感じ本を思うは〉人の本心なり〉蓋し 12123: 人の万物を駆りて。以て之を役使するは。 12124: 智技の巧の勝れるを以てなり。蓋し智巧の物に勝るは。 12125: 思弁の運。睿明を抱く有るを以てなり。 12126: 思は鬼神を行す〉而して情は適否を抱く〉 12127: 事はBCを運す》而して弁は当否を有す》夫れ 12128: 物は。始 有らざる靡し。 12129: 本 有らざる靡し。 12130: 已に思弁の明有りて。愛敬 酬醋に運すれば。則ち 12131: 靄然として以て其の始に感じ〉其の本を思う。是れ乃ち人心なり。 12132: 天神に祗粛す〉 12133: 君父に眷恋す》 12134: 幽明を隔てず。以て奉事して肯畔せざる所以の者なり。惟だ 12135: 利害の心。安危の慮。得るを務め失するを憂う。 12136: 順忤激縦。終に之に畔く有り。 (畔く=そむく) 12137: 明に反するを幽と曰う〉 12138: 生に反するを死と曰う》 12139: 人に非ざるに天と称す〉 12140: 生に非ざるに鬼と称す》 12141: 古よりの定言なり。 12142: 人に反して其の天を知る可ければ〉則ち 12143: 明に反して其の鬼を窺う可し》蓋し 12144: 一大地球は。舟楫の探る所。 12145: 大壌は二つにして。小壌は数を知らず。 12146: 其の国を為すや亦た衆し。 12147: 其の万国を歴視するに。智技の巧は同じからずと雖も。 12148: 神道を設けざる者無ければ。則ち始に感じ本を思う。 12149: 靄然の情。同じき者見る可きなり。 12150: 而して其の所謂神なる者は。 12151: 或いは神なり。 12152: 或いは天なり。 12153: 或いは鬼なり。 12154: 或いは妖なり。 12155: 惑者は惑に由りて之を有す。 12156: 達者は達に由りて之を有す。是の故に。 12157: 人の死生は。一気の通なり。 12158: 結すれば則ち隔す〉 12159: 解すれば則ち融す》 12160: 天地と生化すれば。痕の著す可き無し。 12161: 天は誠を成す〉 12162: 神は妙を為す》 12163: 誠妙は意を用いず。能く為し能く成す。 12164: 彼れは眷念を用いずと雖も〉 我れは則ち始に感じ本に思う〉 12165: 彼れは之を徳とすること有らずと雖も》我れは則ち恩を感じ報を思う》 12166: 君父に愛敬す〉 12167: 鬼神に祭奠す》 12168: 其の事は一なり。是の故に。 12169: 人は感じて思う有らば。則ち将に報いて謝せんとす。是に於て。 12170: 死生の間は。蘋※鐘鼓。車馬玉帛。 12171: 貧苦も材を棄つ〉 12172: 患難に身を献ず》 12173: 如し之に反すれば。則ち呪咀毒殺す。 12174: 皆な此れに外ならざるなり。是の故に。 12175: 人は苟くも始を感じ本を思う者を亡わば。則ち 12176: 何れの処としてか 父に事え君に奉ぜん〉 12177: 何れに適くとしてか天を尊び神を敬せん》 12178: 天は我を覆し〉日は我を煦す〉 12179: 地は我を載し》水は我を液す》 12180: 外にして山川雨露なり〉 12181: 内にして功業恩徳なり》 12182: 奚んぞ我れ従いて奉ぜざるを得ん。是の故に。 12183: 神道の設〉 12184: 人道の義》厚し。至れり。 12185: 人にして始に感じ本に思う者を亡わば。奚を以てか人と為さん。 12186: 明の孤にして愚の衆きは。天下の通態なり。 12187: 夫の積もる者 誠に発し。 12188: 禍福の感応に動くを観て。其の酬醋の態に駭き。 (駭き=おどろき) 12189: 財を棄て身を賊いて。媚を求め涜を致す。 12190: 衆愚は此れに痼して。殆ど医す可からず。 12191: 誠積めば 則ち冥加照然たり〉 12192: 意無ければ則ち吉凶參差なり》 12193: 瞽にして之を視る》 12194: 聾にして之を聴く》 12195: 宜なる哉。其の朦朧。是の故に。 12196: 我は則ち其の祀を過ぎて其の公誠を欽ず。 12197: 奚んぞ意技の巧拙を将て。 (将て=もって) 12198: 衆人と闘うことを為さんや。 12199: 禍を悪み辱を羞づるは》人の良智なり》 12200: 不忍と之を敢えてすると。惟だ義之れ察す。故に 12201: 規矩を失せざれば〉則ち其の履は正し〉 12202: 栄利を慕わざれば》則ち其の操は高し》 12203: 乞より賎しくは莫く〉偸より辱なるは莫し〉 12204: 奪より暴なるは莫く》殺より惨なるは莫し》 12205: 四莫の醜は。時有りて之を敢てす。惟だ 12206: 已むことを得ざるに出づ。故に 12207: 志は操を以てして立す〉 12208: 行は勢を以てして定す》 12209: 操は剛毅に成す〉 12210: 行は時勢に権す》蓋し 12211: 衆情は。愛する所に溺る〉 12212: 好する所に淫す》 12213: 敬する所に憚る〉 12214: 逸する所に怠る》 12215: 利を見て争う〉 12216: 害を見て遯る》 (遯る=のがる) 12217: 智は此に蒙きこと有れば。則ち 12218: 交わるに当りて人を尤め〉 12219: 御するに当りて自ら躓く》 12220: 鬼神の出没は。惟だ是れ感応なり。 12221: 之を揮けば絃誦に上る〉 (揮けば=さしまねけば) 12222: 之を駆れば水火に趨る》鼓舞の妙なり。 12223: 火は焚け水は流る〉 12224: 鳥は飛び魚は潜む》 12225: 天地は容せざる所無し。而して其の序を乱す所莫し。故に 12226: 道を険隘に立すれば。観る可きが如くと雖も。済衆に病しむ。故に 12227: 君師は各好尚を以て衆を率いること母し。終に大同を害す。 12228: 天地は物を生して。用を此れに資す。 12229: 無益を為して〉 12230: 有益害すれば》 12231: 造化の徳に背く。故に 12232: 其の善悪は〉則ち天地の善悪なり〉 12233: 其の是非は》則ち天地の是非なり》故に 12234: 其の道を開く〉 12235: 其の党を結く》 12236: 其の徒を率ゆ〉 12237: 其の業を餬す》 12238: 大人は。保して與らず。是の故に。 12239: 君子は。天に順い誠を奉じ。仁に居り命に由る。 12240: 人と物と。同じく喜怒愛憎の情を抱きて。而して 12241: 物は戒令教訓無くして立ち。 12242: 人は戒令教訓を待ちて治まるは何ぞや。蓋し 12243: 思弁の巧。鼓舞の妙。物は之を有せず。而して 12244: 惟だ人は之を有するを以て。能く離合の勢を挟む。 12245: 已に離合の勢を挟む。合せざれば則ち壊乱至る。故に 12246: 君子は。世の為に 憂えざること能わず。 12247: 不肖の為に教えざること能わず。 12248: 人境一たび開けて。上は一を奉じて〉而して其の平を掌る〉 (掌る=つかさどる) 12249: 下は一を御して》而して其の役を執る》 12250: 勢の至る所なり。勢は則ち至る。而して 12251: 人の智解意匠は。則ち一ならず。 12252: 一ならざれば則ち世の為に憂え。不肖の為に教うるは。則ち 12253: 一なりと雖も。其の設は或いは趣きを異にす。 12254: 是れ亦た事の態なり。勢の至る所なり。蓋し人の群を為すや。 12255: 喜怒愛憎を抱きて。離合の勢を挟めば。則ち勢は。 12256: 上は一を奉じて〉而して其の平を掌り〉 12257: 下は一を御して》而して其の役を執ら使めざるを得ず》 12258: 若し剖して散するや。千万尽きず。故に其の憂えて人を教うるは。 12259: 一君一臣。以て教え以て賞で〉 12260: 以て戒め以て殺す》 12261: 若し其の事を悉せば。孰れか能く其の終を極めん。是の故に。 (悉せば=つくせば) 12262: 其の上なる者は〉赤子に父母たり〉 12263: 其の下なる者は》身首に手足たり》 12264: 已に身首の為に〉手足と為る〉 12265: 口の食う所〉目の視る所〉痛癢饑寒〉百役執らざる所莫し〉而して 12266: 亦た其の命を祗まざる所莫し》 (祗まざる=つつしまざる) 12267: 已に衆人の為に》父母と為る》 12268: 児の生養す可き所の者》防禦す可き所の者》 12269: 吉凶驩虞》百事慮らざる所莫し》而して 12270: 亦た其の事を敬せざる所莫し》故に。 12271: 下なる者は上を養う〉而して我が平を此に掌る〉 12272: 上なる者は下を御す》而して其の養を此に恃む》是に於て。 12273: 其の君なる者は〉位 上に尊し〉 12274: 臣なる者は》位 下に卑し》而して 12275: 尊卑の道は。人人 之れを知る。人人 已に之れを知ると雖も。 12276: 其の天人の分に於て。世に称せられて識者と称する者も。猶お其の分に罔し。 12277: 其の分は如何。蓋し 12278: 人境は〉自ら尊卑に用有り〉上は尊く下は卑し〉 12279: 天境は》本と尊卑に意無し》交も其の役に執る》 (交=こもごも) 12280: 苟くも愚にして思 天境に及ばざれば〉 12281: 自ら君位に傲り〉凌虐暴掠〉終に其の尊を失す〉 12282: 罔くして義 人境に明ならざれば》 12283: 下職を供せず》怨望悖逆》禍 子孫に延ぶ》是の故に。 12284: 君は民を安んずるを以て職と為す〉 12285: 臣は君を奉ずるを以て 義と為す》而して 12286: 四民は君の職を相けて。而して其の蔭に息する者なり。故に (相けて=たすけて) 12287: 君は能く其の柄を執る〉 12288: 師は能く其の義を用う》 12289: 苟くも君は其の柄を舎て〉 12290: 師は其の義を乱せば》 12291: 毒 無窮に流る。此の故に。 12292: 智 未だ天に通ぜず〉 12293: 行 未だ人に適せず》 12294: 規規として法度を執りて相い鬩ぐ。 (鬩ぐ=せめぐ) 12295: 達者と称するに足らざるなり。蓋し 12296: 生れて或いは上と為り〉或いは下と為るは〉各おの分有るなり〉 12297: 或いは事に任じ》或いは閑に処すは》各おの地有るなり》 12298: 何ぞ擾擾として其の守を廃せんや。 12299: 敢えて其の守を廃するに非ず。惟だ人を善に誘う者は。已む可からず。 12300: 彼の世の為に憂え。不肖の為に教える者は。将に他と此の楽を楽しまんとす。 12301: 食有れば之を推す〉 12302: 衣有れば之を解く》 12303: 豈に此の楽有りて。而して人と偕にせざる可けんや。 12304: 古より仁者の心は同じく然り。然りと雖も。誘善の意は。已む可からずして。 12305: 而も事の態。勢の至る所。軌を同じくして騁すること能わず。 12306: 道は口舌に上りて。聚訟騒然。終に敵讎と為る。蓋し 12307: 人の将に真を証せんとするや。必ず天を引きて証と為す。然り而して 12308: 天人の道反す。反を以て類を証す。 12309: 其の一中に居する者異ならずと雖も。而も類を反する者。 12310: 豈に誤らざるを得んや。蓋し 12311: 人の人を知る〉其の術は推拡を貴ぶ〉而して其の反を舍てず〉 12312: 人の天を知る》其の術は反観を貴ぶ》而して其の比を舍てず》 12313: 而るを若く為さず。惟だ推拡のみ之れ務め。 12314: 終に自ら以て天を極め地を悉し。幽に入り玄を鉤す。 12315: 然れども天地は洪蕩たり。其の向う者は向うに任す〉 12316: 其の背く者は背くに従う》 12317: 我れ此れを容るるに憚らずと雖も。 12318: 若し之を天に順じ人に応ずと言わば。則ち未だなり。 12319: 今の学を習う者は。其の主に従いて。其の門を守る。 12320: 彼の主に従いて。彼の門を守る者と。 12321: 各おの其の徒を率い。相い共に巷に争う。 12322: 傍観する者をして。終に帰する所を知らざらしむ。 12323: 噫 人。七尺の身〉 12324: 百年の生》眇として斯の世に立つ。 12325: 其の日月の逾邁を傷い〉江山の依稀を感ず〉生を惜しむの情なり〉 (逾邁=ゆまい) 12326: 往り其の化の窮する所を思う》 (往り=おりおり) 12327: 終に其の神の託する所を索む》 12328: 生を持するの疑なり》 12329: 之を経に推す者は此の如し〉 12330: 之を緯に推すも亦た又た此の如し》 12331: 其の情疑を執して。自ら智解を生ず。 12332: 其の心の安んずる所を獲て。之を天地に拡ぐ。 12333: 其の師とする所の者は心。人を持して天を索む。 (索む=もとむ) 12334: 天は逾いよ遠し。因循薫蒸。往きて復らず。 12335: 苟くも膠固執泥に非ざれば。則ち口を此に餬するなり。 12336: 道を人に尽す〉 12337: 命を天に待つ》