10671: 人なる者は。生を以て身を保す〉 10672: 意を以て為を為す》 10673: 意は則ち知感なり〉 10674: 為は則ち声技なり》 10675: 声技なる者は。知感の運する所。含霊は同じく有す。 10676: 声の発するを之れ言と為すは。則ち惟だ人のみ之を有す。蓋し 10677: 人の言を為すや。動に精なり〉而して 10678: 意に麁なり》故に 10679: 言は意を尽くすこと能わず〉而して為は則ち言に尽くす〉夫れ 10680: 言なる者は。主に由りて声を命ず。 10681: 声主を運為して。緒を抽きて之を引く。是に於て。 10682: 其の主を有して〉而して之を口に上す可し〉 10683: 其の主無くして》亦た 之を口に上す可し》 10684: 主を認めて之を声にす。声の善なる者なり。是の故に。 10685: 主なる者は〉天なり〉 10686: 之を声にする者は》人なり》 10687: 呼は未だ其の主を知らず。 10688: 応は其の主に非ず。 10689: 善は其の主を知り〉 以て之を呼べば〉隣人の応を受けず〉 10690: 未だ其の主を知らずして》以て之を呼べば》隣人と応ずと雖も而も之を信ず》 10691: 声なる者は〉人なり〉転ずるなり〉 10692: 舟は亦た以て車と呼ぶ可からざるなり〉 10693: 主なる者は》天なり》定まるなり》 10694: 舟は以て車と為す可からざるなり》 10695: 主は実を得るを貴しとす〉 10696: 声は相い称うを善しとす》 10697: 車を車とし舟を舟とす。実は当り声は称す。 10698: 意は内に於て有す》 10699: 技は外に於て施す》故に 10700: 意智は内に運す〉 10701: 言動は外に露す》 10702: 動なる者は。一守一禦。之を以て酬醋す。 10703: 声に発する者は。正誕信偽なり。 10704: 造化の間は〉常有り変有り〉正有り妖有り〉 10705: 言動の間は》正有り誕有り》真有り妄有り》 10706: 之を審かにせざれば。則ち妄誕と変妖と混ず。 10707: 信偽と真妄と配行せず〉 10708: 是非と正誕と配立せず〉 10709: 大瞽は衆瞽を欺く〉 10710: 大聾は小聾に聴く》是を以て。 10711: 徳に就きて之を呼べば〉無意を天と為す〉有意を人と為す〉 10712: 道に就きて之を呼べば》為を 神と為す》成を 天と為す》 10713: 一一各を為す〉 10714: 道を反して処を混す。必ずしも相い先後雄雌せざるなり。故に 10715: 然らざるを得ざる者に於て声して。勢と曰う。 10716: 之をして 然らしむる者に於て声して。力と曰う。 10717: 然する所の者は。故と声す。 (故=こ) 10718: 以て然る者は。 理と声す。 10719: 之に駕して以て往く。声主に於て失する所莫し。 10720: 主は〉実なり〉天成なり〉人為を竢たざるなり〉 10721: 声は》名なり》言有りて後に成す》人の事なり》 10722: 名なる者は〉実の声なり〉 10723: 実なる者は》声の主なり》 10724: 名を知りて主を知らず〉門に入りて盤桓す〉 (盤桓=ばんかん) 10725: 主を知りて名を知らず》門を出でて彷徨す》 10726: 主は之を心に於て得る〉 10727: 声は之を言に於て得る》 10728: 諸を思言に失して。向背は途を異にす。是の故に。 10729: 無意なる者は。主なり。天とは。 無意なる者に於て声す。 10730: 有意なる者は。主なり。人とは。 有意なる者に於て声す。 10731: 為成なる者は。主なり。天神とは。為成なる者に於て声す。故に 10732: 名を以て之を求むれば〉実は之の解を為す〉 10733: 実を以て之を言えば》 名は乃ち其の解なり》 10734: 良馬を得て神龍と名づくる者有り〉 10735: 神龍至ると聞きて〉而して識らざる者 驚走す〉 10736: 死鼠を函にして諸を人に贈る者有り》曰く璞を贈ると》 10737: 其の人 以て未だ磨かざるの玉と為す》 10738: 之を呼ぶこと異なれば〉 則ち其の主の同異を察せず〉而して先ず之を疑う〉 10739: 之を呼ぶこと同じなれば》則ち其の主の真假を弁ぜず》而して先ず之を信ず》 10740: 名に邪正有り〉択ばずんばある可からず〉 10741: 主に美悪有り》察せずんばある可からず》 10742: 名なる者は〉人の命ずる所なり〉 10743: 実なる者は》天の為する所なり》 10744: 或いは声主を乱す〉 10745: 或いは声主を繆す》※階の生ずる所なり。 10746: 事は固に之を呼ぶこと同じくして〉而して実の異なる者有り〉 10747: 信ずれば〉則ち其の名の同じきに因りて〉而して其の主を愛す〉 10748: 疑えば〉 則ち其の名の同じきに因りて〉而して其の主を悪む〉 10749: 又た之を呼ぶこと異にして》而して実の同じき者有り》 10750: 悪めば》則ち其名の醜を以て》同主の美を掩う》 10751: 愛せば》則ち其名の美を以て》同主の醜を掩う》 10752: 徒らに其の名を誉めて〉而して其の実を察せず〉 10753: 之を栄すること能わず〉還って辱を其の主に於て遺す〉 10754: 徒らに其の名を毀りて》而して其の実を察せず》 10755: 其の病を医すること能わず》還って佗の侮を致す》 10756: 名実の義は。大なり。 10757: 宜しく之を審択し明察すべし。是の故に。 10758: 天と呼び人と呼び。天神と呼び。云云と呼ぶ。 10759: 跡を以て指さして之を示せば。則ち各主は各声を為す。然れども 10760: 各なる者は〉統の分なり〉 10761: 統なる者は》各の体なり》 10762: 豈に轅輿輪輻を数えて。彼の車を知らざらんや。 10763: 言は以て動に尽く可し〉 10764: 動は以て言に尽く可し》則ち其の技を為す。固に一なり。然り而して 10765: 意を以て技に比すれば。則ち言動は門戸を以て出入す。 10766: 業 已に門戸を以て出入すれば。則ち其の麁なるや知る可し。 10767: 麁と雖も而も其の指揮は神明に出づ。 10768: 麁跡の定を認め。精主の活に逢わんことを求むるは。難し。故に 10769: 技を施すの道にては〉其の善は〉果して善か悪か〉 10770: 其の非は》果して非か是か》 10771: 語を下すの道にては》其の汎は》果して汎か切か》 10772: 其の正は》果して正か誕か》 10773: 活主は其の麁を御して。定中 変化を為す。 10774: 耳は聡にして目は明なり〉 10775: 手は巧にして足は健なり》 10776: 天なる者は〉神 営して物を為す〉 10777: 人なる者は》意 営して之を物に於て為す》故に 10778: 天なる者は〉之を言動す〉 10779: 人なる者は》此に言動す》故に 10780: 意の運する所は。口す可く身す可し。 10781: 之を物に於て為す者は。物を成さんと欲するなり。故に 10782: 事の天人なる者は。物を為すと。之を物に於て為すとなり。夫 10783: 物なる者は〉畜蔵を服食に於て用いず〉 10784: 巧を 居宅に於て営まず〉 10785: 玩を 肢体に於て好まず〉 10786: 離合を群醜に於て用いず〉人は則ち之を用う》故に 10787: 人と相い輔け〉 10788: 物を将けて自ら足る》故に (将けて=うけて) 10789: 天地万物を以て。皆な我の用と為す。是を以て。 10790: 能く之を物に於て為すなり。故に天は数を為す〉 10791: 人は之を数う》 10792: 天は運転を有す〉 10793: 人は之を暦象にす》 10794: 天は親子を為す〉 10795: 人は之を尊卑にす》 10796: 天は男女を為す〉 10797: 人は之を配偶にす》 10798: 天は土壌を為す〉 10799: 人は之を都邑にす》 10800: 統べて治め。依りて養う。故に之を君民に於て為す。 10801: 材を治め用を為す。故に之を士農工賈に於て為す。 10802: 之を愛するに徳を以てす〉 10803: 之を威するに兵を以てす》 10804: 之を知るに思と学とを以てす〉 10805: 之を行うに勤と礼とを以てす》蓋し 10806: 天地は活立す。故に其の用も亦た活用す。 10807: 我は隔散の生を以て。偏に有意の神を用う。故に 10808: 未だ通して活すること能わず。 10809: 其の思に泥し。其の用に死す。夫れ 10810: 一分一合なる者は。 体なり。 10811: 之を分し之を合する者は。気なり。 10812: 元気は本と一なり〉故に分す〉 10813: A昜は本と二なり》故に合す》 10814: 分なる者は〉天性の活なり〉 10815: 合なる者は》神才の通なり》 10816: 之を用いて其の通に達せず〉二の反に罔す〉 10817: 通すれば則ち聖なり〉 10818: 執すれば則ち頑なり〉 10819: 通なる者は〉天下の至美〉 10820: 執なる者は》天下の通患》是の故に。 10821: 愛なる者は〉令徳なり〉而して小人の愛や愛に溺る〉 10822: 悪なる者は》醜徳なり》而して君子の悪や愛に帰す》 10823: 活なる者は〉美事なり〉而して小人の活や禍に醸す〉 10824: 殺なる者は》醜事なり》而して君子の殺や福に布す》 10825: 執すれば〉則ち通に於て此れにすと雖も〉而れども塞に於て彼にす〉 10826: 恩に於て此れにすと雖も》而れども怨に於て彼にす》 10827: 通すれば》伸を屈外に於て求めず》 10828: 利を義外に於て謀らず》 10829: 困中に於て楽しむ〉 10830: 窮中に於て達す》是を以て。 10831: 凛乎として奪う可からずと雖も〉 雍容として余裕有り〉 10832: 企て及ぶ可からざるが如しと雖も》岸崖有る莫し》 10833: 観る可しと雖も〉而も之を測ること能わず〉 10834: 賁然たりと雖も》端倪す可からず》 10835: 之を運して其の活に至らず》一の合に間あり》 10836: 通なる者は〉天成の才なり〉 10837: 活なる者は》神為の性なり》 10838: 良医は毒を以て病を治す〉 10839: 良将は弱を以て強を制す》 10840: 拙工は薬を以て病を致す〉 10841: 怯将は強を以て弱を畏る》是に於て。 10842: 強弱は名を失う〉 10843: 毒薬は用を易ゆ》 10844: 人は有意を以て之を運す〉 10845: 天は無意を以て之を運す》是を以て。 10846: 世は或いは禍を福とし福を禍とし。歓を悲しみ悲を歓ぶ有り。 10847: 皆な運転の常無きなり。 10848: 事は偏行せず〉 10849: 物は雙立せず》 10850: 皆な二の間に成す。故に 10851: 順と曰えば〉則ち其の声は美なり〉 10852: 逆と曰えば》則ち其の声は醜なり》 10853: 然れども徒順徒逆は。用を為さざるなり。故に 10854: 剛直諌規は〉逆にして美なり〉 10855: 阿諛足恭は》順にして醜なり》 10856: 順なる者は〉随いて之を将る〉 (将る=おくる) 10857: 逆なる者は》向いて之を迎う》 10858: 事物は必ず向迎の間に成す。是の故に。 10859: 地載は天覆に向い〉万物は皆な其の間に成す〉 10860: 左手は右手に向い》万技は尽く其の間に出す》 10861: 順にして反かず〉逆にして之を戻し〉同じく不美に帰す〉奚んぞ順逆を択ばん〉 10862: 逆にして争わず》順にして能く守る》同じく善に帰す》徳の相い得て全きなり》 10863: 順の専らに行い難きは〉柔に流るればなり〉 10864: 逆の徳と名づけ難きは》戻に至ればなり》 10865: 如し未だ其の活に達せざれば。則ち 10866: 美も亦た行い難し〉 10867: 醜も亦た避け難し》故に 10868: 人は。必ず物を見ては〉則ち塞と為す〉 10869: 己を見ては》則ち通と為す》 10870: 其の塞や〉我の通する所に於て塞す〉 10871: 其の通や》彼の塞する所に於て通す》 10872: 若し彼の通する所を以て。我の塞する所を観れば。 10873: 禽獣は。教えずして能く搏撃し。学ぶこと無くして能く毒薬を弁ず。且つ 10874: 猫狗の能く※ぐ〉 10875: 狐狸の能く魅す》 10876: 豈に我の通する所ならんや。是を以て 10877: 貴人は顰蹙の饌〉餓者は朶頤の食なり〉 (饌=さん。朶頤=だい) 10878: 我れ憂苦鬱悶の時は〉 10879: 讐家抃躍の日なり》是の故に。 (抃躍=べんやく) 10880: 我を以て地を観れば。 地は大なり。 10881: 天を以て地を観れば。 地は小なり。 10882: 地を以て我を観れば。 我は小なり。 10883: 蚊虻を以て我を観れば。我は大なり。而して 10884: 其の大は天に於て止まらず〉 10885: 其の小は蚊虻に於て尽きず》 10886: 然れば則ち通塞順逆。強弱小大。奚を以てか之を定めん。是を以て 10887: 旋転して之を観れば〉所として左ならざる無く〉所として右ならざる無し〉 10888: 上下して之を観れば》所として高からざる無く》所として卑からざる無し》 10889: 執すれば則ち塞す〉 10890: 通すれば則ち活す》 10891: 跡を尋ぬる者は〉跡無きに至れば〉則ち塗に迷う〉 10892: 粲を数うる者は》混に至れば則ち手を拱す》 (自筆のまま) 10893: 安んぞ活斯に之れ達せん。是の故に (安んぞ=いずくんぞ) 10894: 昏主も亦た必ず人の言を用う〉 10895: 聡主も亦た必ず人の言を禦ぐ》惟だ 10896: 昏主に活権衡無し〉故に 10897: 此を容るるを以て〉而して彼の昌言を禦ぐ〉聡主に活権衡有り〉故に 10898: 此を禦ぐを以て》 而して彼の昌言を容る》故に 10899: 賢者 古訓を以て之を規すれば〉則ち 10900: 不肖者も亦た古訓を以て之を飾る》 10901: 正士 法言を引きて以て之を正す〉 10902: 乱人も亦た法言を引きて以て之を乱す》故に 10903: 物を観て物に於て活せず。 将に物に於て病まんとす。 10904: 書を観て書に於て活せず。 将に書に於て病まんとす。 10905: 理を説きて理に於て活せず。将に理に於て病まんとす。是を以て 10906: 義以て宜しく。礼以て中り。智以て通じ。応以て変ずるは。用の活する所なり。 10907: 運用は苟くも活せずんば。則ち技能有りと雖も。奚を以てか用うることを為さん。 10908: 惟だ混焉として一なり〉孰れか二を執りて以て事に応ぜん〉 10909: 天地は位を異にすと雖も。相い成すること二に非ず。 10910: 耳目両両たりと雖も。 10911: 手脚隻隻たりと雖も。 10912: 作用は則ち二に非ざるなり。故に 10913: 左脚を駐むるは〉右脚を運するが為なり〉 10914: 昏夜に於て息うは》朝日に於て動かんが為なり》 10915: 物の動止。心の善悪。触るれば則ち二を跡す。 10916: 孰れか一を其の外に於て求めん。 10917: 二は直ちに以て二と為す可くんば。則ち左は方を画す〉 10918: 右は円を画す》 10919: 前は東呉の話に接す〉 10920: 後は西秦の報に聴く》 10921: 吹けば冷なり〉 10922: 嘘せば温なり》 10923: 機触れて跡反す。孰れか其の由りて来たる所を知らん。是を以て 10924: 能く一を奉ずる者は。能く其の機を慎しむ。故に 10925: 其の事物に応するや窮まり無し。 10926: 惟だ粲然として二なり》孰れか一を執りて以て物を御せん》 10927: 跡を認めて固執し。通に於て病む。 10928: 北人は再登の国を疑う〉 10929: 南人は常夜の国を信ぜず》然りと雖も。 10930: 無なる者は〉有の待つ所なり〉 10931: 実なる者は》虚の偶する所なり》故に 10932: 好んで明を欲するや必ず昏なり〉 10933: 好んで美に処するや必ず醜なり》 10934: 全を欲すれば則ち欠く〉 10935: 誉を欲すれば則ち毀らる》 10936: 長を欲すれば則ち短く〉 10937: 治を欲すれば則ち紊る》 10938: 之を労せんと欲すれば〉 則ち逸す〉 10939: 之を悦ばしめんと欲すれば》則ち怒る》故に 10940: 自ら智と為す者は必ずしも智ならず。 10941: 自ら賢と為す者は必ずしも賢ならず。 10942: 能く文を成する者は。質なり。 10943: 能く剛を為する者は。柔なり。 10944: 怯を養う者は能く勇む。 10945: 卑を積む者は能く高し。 10946: 能く変ずる者は常なり。 10947: 能く動する者は止まるなり。 10948: 能く危ぶむ者は安んず。 10949: 能く黙する者は言う。 10950: 能く明なる者は赫赫たらず〉 10951: 能く晦なる者は昏昏たらず》 10952: 至清は濁るが如し。 10953: 至巧は拙きが如し。 10954: 能知は愚なるが如し。 10955: 能慮は迂なるが如し。 10956: 反を以て偏を済う。一の美を成する所以なり。 10957: 苟くも其の道を亡くせば則ち囹圄湯※〉姦凶を懲らすこと能わず〉 10958: 能く其の道に由らば〉則ち朽索して以て駻馬を馭す可し〉是の故に。 10959: 二に通ぜざれば〉則ち 10960: 一を奉ずる能わず》 10961: 二即一なれば〉親疏は和す〉 10962: 一即二なれば》上下は序す》 10963: 事は経を為す〉 10964: 物は緯を為す》 10965: 経は気物を没す〉 10966: 緯は気物を露す》 10967: 没は天神の用を為す〉 10968: 露は天地の体を為す》 10969: 孰れか能く之を没せん〉 10970: 孰れか能く之を露せん》 10971: 混として縫無し〉 其の一や全なり〉 10972: 粲として跡を反す》其の二や立なり》 10973: 一なる者は〉二の全なり〉二外の一無し〉 10974: 二なる者は》一の分なり》一外の二無し》 10975: 而るを茲に及ばず。 10976: 有限の智を以て〉将に無窮の為を窮めんとす〉 10977: 終に之を窮むること能わず〉見て不測と為す〉 10978: 有作の変を以て》定常の成を観る》 10979: 終に之を易うること能わず》呼んで以て不Iと為す》蓋し 10980: 物なる者は〉無意なり〉 知すれば則ち運す〉 10981: 感すれば則ち応す〉 10982: 人なる者は》有意なり》故に知して或いは運せず》 10983: 感して或いは応せず》 10984: 能く変を尽す所以なり。視聴云為。感応の文は。 10985: 之を神に於て変化す〉而して思弁好悪す〉 10986: 之を為に於て錯雑す》而して運用言動す》 10987: 物は意を具せず〉 10988: 人にして意を具す》故に 10989: 物は精神の分に混然として〉 10990: 人は則ち其の間に粲然たり》故に 10991: 好悪の性〉 10992: 運為の意》 10993: 其の有無を反して。事も亦た以て異なる。蓋し 10994: 物は成すれば則ち気は具するなり。 10995: 具するの気は。之を性と謂う。 10996: 具して華なる。之を神と謂う。是の故に。 10997: 情なる者は〉好悪なり〉之を分すれば則ち慾と偶す〉 10998: 意なる者は》運為なり》之を分すれば則ち智と偶す》故に。 10999: 情慾なる者は〉性の具する所なり〉 11000: 意智なる者は》神の華する所なり》 11001: 性は以て生に具す〉 11002: 神は以て体を使む》 (使む=せしむ) 11003: 体は各なれば則ち隔す〉 11004: 気は同なれば則ち通す》 11005: 神の能く通するは。体の隔を以てなり。 11006: 往くとして感応に匪ざる者莫し。是を以て。 11007: 怨を以て衆に感すれば〉衆は怨を以て応す〉 11008: 徳を以て人に感すれば》人は悦を以て応す》 11009: 涙を垂れて命を授く〉 11010: 歯を切して相い賊す》 11011: 孰れか之をして然ら使めん。 11012: 或いは患難の感〉己に切なり〉 11013: 或いは喜楽の応》彼に反するなり》 11014: 桴を以て鼓に感す〉鼓は響を以てして応す〉 11015: 形を以て鏡に感す》鏡は影を以てして応す》 11016: 治乱興亡の途は判す〉 11017: 安危栄辱の機は決す》 11018: 而るを識らず。爾より出づる者を以て。 11019: 天人を怨尤す。是を以て。 11020: 意智能く通すれば則ち聖なり〉 11021: 能く体すれば則ち通す。君子の事なり。是に於て。 11022: 知する者は自ら明に〉 11023: 処する者は自ら到る》 11024: 体して通すること能わざれば。則ち己を専らにして人を忘る。 11025: 己が為にして人を栄辱す。我れ之を聞く。君子は専らにすること無し。 11026: 孝を専らにすれば〉兄弟に友ならず〉 11027: 忠を専らにすれば》同僚に良ならず》 11028: 功を専らにすれば害に近づく〉 11029: 恵を専らにすれば疑を招く》 11030: 是れ蓋し未だ人と通して善為ること能わざるなり。 11031: 美事 猶お且つ専らにす可からざるなり。 11032: 而るを況んや其の不美なる者をや。 11033: 之を非とすれば〉則ち其の辞を以て〉其の意を害す〉 11034: 之を是とすれば》則ち其の意を以て》其の辞に足る》 11035: 佗無し。物に通すること能わざるは。情慾 佗と隔すればなり。 11036: 感応は能く鼓すれば則ち神なり》 11037: 紛解け難結ぶ》 11038: 福市し禍嫁す〉 11039: 絃歌は鼓※に代る〉 11040: 呻吟は舞踏に転ず》 11041: 機は之をして然ら使む。 11042: 利は則ち制を為す〉 11043: 鈍は則ち制を受く》 11044: 安危治乱は此に決す。 11045: 勢の走る所〉虎も鼠と為る〉 11046: 爵も※と為る》 (※=せん) 11047: 故に之を鼓し之を舞すれば。則ち 11048: 怯者も勇まざること能わず〉 11049: 懦者も力まざること能わず》 11050: 勇にして且ち力めば。 11051: 則ち孰れか敢えて之を怯懦と謂わん。 11052: 之をして反せざるを得ざらしむ〉 11053: 反すれば則ち従いて其の族を赤す〉 11054: 之をして怨らざるを得ざら使む》 11055: 怨れば則ち従いて其の人を賊す》 11056: 亦た冤ならずや。 11057: 或いは※儻慷慨の士をして〉行を※し名を垢さしむ〉 (全集の「個儻」は誤り。) 11058: 或いは放蕩狡黠の徒をして》身を※し面を革めしむ》故に 11059: 有才をして其の能を倒用せしむるはは〉秉勢者の罪なり〉 (秉勢=へいせい) 11060: 駑馬をして其の能を尽さしむるなるは〉執轡者の良なり》 11061: 天地は〉物なり〉 11062: 感応は》事なり》 11063: 物有れば則ち事有り〉 11064: 事有れば則ち物有り》 11065: 物を観て天地を知す〉 11066: 事を観て天神を知す》 11067: 鬼神なる者は〉物を用する者なり〉物の体に非ざるなり〉 11068: 天地なる者は》用に体する者なり》気の用に非ざるなり》 11069: 体に非ざれば則ち耳目は得て及ばず〉 11070: 用なれば 則ち感応は得てIわず》是を以て。 11071: 祭祀は必ず至誠を主とし。感格を事とす。 11072: 風雨雷霆の変より。※鬼妖※の怪に至りて。 11073: 感応の致す所にして。変化は測る可からず。 11074: 之を信ぜざらんと欲すれば〉則ち的然として験有り〉 11075: 之を信ぜんと欲すれば》 則ち没焉として跡無し》是れ 11076: 弁ずる者の弁に窮し〉 11077: 惑する者の惑に淫する所以なり》 11078: 譬えば猶お衆の戯場に在るがごとし。 11079: 優人の為す所。辛苦 相い逼るに至りては。則ち観る者は之が為に。 11080: 或いは悽愴。或いは欷歔。或いは還って自若たり。是れ 11081: 感する者の異なるに非ざるなり。 11082: 応する者の同じからざるなり。又た転じて嬉戯に入れば。則ち 11083: 前の悽愴欷歔する者も。捧腹解頤す。是れ 11084: 応する者の同じからざるに非ざるなり。感する者の異なるなり。故に 11085: 或いは相い感応す〉 11086: 或いは相い感応せず》 11087: 或いは感して応せず〉 11088: 或いは応せんと欲して感せず》 11089: 異同厚薄。千変万化。是に於て。 11090: 祭祷の験。報応の道。妖怪の事は。 11091: 有り・無し。存す・亡す。是れ乃ち無意の為す所。 11092: 有意を以て之を測り之を必とす可からず。 11093: 世の惑う者は。測る可からざる者に於て之を測る 11094: 必とす可からざる者に於て之を必にす》 11095: 神を涜し鬼に媚び。城を為し郭を為す。 11096: 上は日月星辰〉風雲雷霆より〉 11097: 下は山海艸木》水火蛇龍に至るまで》 11098: 皆な泥塑木偶。冠冕を戴き。衣裳を垂れ。以て其の神に形す。 11099: 之を望むに儼然として人なり。故に 11100: 之に事うる者は。之を人として事え。 (事え=つかえ) 11101: 之を祈る者は。之を人として祈る。 11102: 物を知らざるの致す所なり。