凡 例
1.語注は、復元 2.必要があれば、条理語ではない語も解説した。
3.「 〉」は黒ごまの傍点を、「 》」は、白ごまの傍点の代用記号である。正確な用法は復元版「玄語」(PDF)を参照のこと。

条理語辞典その一


00014: 物は性を有し〉性は物を具す〉性は物と混成して〉而して罅縫無し〉故に其の一や全なり〉

    【物】ぶつ 世界を構成する素材。物質。アリストテレスの言う「質料因」に該当する。
    【性】せい 世界を構成する諸性質。諸類型。「形相因」に該当するが、二分岐を内包している点が異なる。この二分岐
         は、情報処理の常套手段のひとつである平衡二分木 balanced binary tree であるが、これは驚くべき先見
         性である。
    【有】う  可能的に持つこと。内在させていること。
    【性】せい 同上。
    【物】ぶつ 前出。
    【具】ぐ  ここでは、現実態・具現態として持つこと。
    【性】せい 前出。
    【物】ぶつ 前出。
    【混成】こんせい 混然と一体化した状態を形容する語。
    【罅縫】かほう 縫い目のこと。ここでは条理という二分岐の連鎖を比喩しているが、「条理無し」としないことに注意。
    【一】いち 全体の代数的表記。また、個物をも意味する。個もまたひとつの全体である。この全体は「言明不能の一者
         (全一者)であり、存在するすべてのものの背景にあって、世界全体を媒介する。この唯一者にいかなる主
         観的表象をもたてないところに梅園の思考の合理性がある。
    【全】ぜん 全体。欠落のない状態。すべて存在するものは、それぞれにおいて「全」である。

00015: 性は體に偶し》物は氣に偶す》物は性と粲立して》而して條理有り》故に其の二や偏なり》

    【性】せい 前出。
    【體】たい 性は条理によって二分岐してふたつに分かれる。この下位の二つのものを「体」といい、
        この関係は際限ない連鎖を成す。体は、侌(陰)の体と昜(陽)の体に分かれる。
    【偶】ぐう 性は体に下行し、体は性に上行する。この上行・下行の関係を言い、際限のない連鎖を成して
        全体を平衡状態に置く。(語例:偶力-ぐうりょく-
    【物】ぶつ 前出。
    【気】き  無形のものを総称して「気」という。素材は、形のないものと組み合わされて初めて形に
        なる。たとえば、食器などがよい例である。これも『玄語』における質料因と考えられる。つまり、『玄語』
        においては、質料因も二分木構造 binary tree structure によって階層化される。
    【偶】ぐう この偶は、一対二の関係(「一性二体」という)ではなく、「気」と「物」の一対一の関係を示
        す。「気」と「物」は互いに浸透しあったり、截然と分かれたりする。
    【物】ぶつ 前出。
    【性】せい 前出。
    【粲立】さんりつ 相補的な二項に展開している状態を形容する語。
    【条】じょう 情報処理的に言えば平衡二分木(balanced binary tree)のこと。概念的に言えば、相補的二項関係のこと。
         全一者が個物を媒介する構造。個物は、「条」の外にあり、「条」によって接合している。
    【理】 「条」によって分かたれたものの内部構造を「理」という。このように「条理」そのものも「条」と「理」の
         二項の組み合わせである。
    【二】に  相補的な二項に展開されたものの代数的表記。
    【偏】へん 平衡二分木(あるいは相補的二項)をその骨格として持つ「玄語」の体系に於ては、対立項と
        の平衡関係なしには成立し得ない状態を「偏」と言う。上位に対しては「偏」となる項も、下位に
        対しては「全」となる。(参考図書 『ホロン革命』アーサー・ケストラー 工作舎)

★注 この二行からは『物理小識』(方以智ほういち)の影響が伺われる。「浦氏手記」(うら ししゅき)に同書からの抜粋がある。
   また『天経或問』(游子六ゆうしろく)からの抜粋もある。この思想の系譜を発見したのは、高橋正和たかはしまさやす(2005年没)
   である。『三浦梅園の思想』(ぺりかん社(株)昭和56年5月30日発行)にその考察がある。三浦梅園資料館で梅園の蔵書を
   見れば一目瞭然である。

00016: 性は物に性す〉

    【性】せい 14行の「性」に同じ。
    【物】ぶつ 14行の「物」に同じ。
    【性】せい 同上。

00017: 物は性に物す》故に

    【物】ぶつ 14行の「物」に同じ。
    【性】せい 14行の「性」に同じ。
    【物】ぶつ 同上。

< ここまで本文。以下、自筆割り注。版下本一段落とし >

00018: 一卽一一〉

    【一即一一】いちそくいちいち 上位の「一」が下位の二つの「一」に展開されることの代数的表記。

00019: 一一卽一》 

    【一一即一】いちいちそくいち 下位の二つの「一」が上位の「一」に統合されることの代数的表記。
            15行の「偶」の関係が、展開方向・統合方向に成り立つ。「一性二体」の代数的表記。
            「即」は、演算記号として機能しており、「一」と「一一」は偶関係にある。

00020: 氣は天を成す〉

    【気】き  かたちなきもの。
    【天】てん 「玄語」に於ては、一大宇宙から一微塵に至るまで、それぞれの「天地」を持つ。「天」
         は無形のものである「気」によって形成される。
    【成】せい 形成すること。成ること。

00021: 物は地を成す》

    【物】ぶつ 14行の「性」と「粲立」した「物」。
    【地】ち  「玄語」に於ては、一大宇宙から一微塵に至るまで、それぞれの「天地」を持つ。「地」
         は有形のものである「物」によって形成される。
    【成】せい 形成すること。成ること。

00022: 性は一を具す〉

    【性】せい 14行の「物」と「粲立」した「性」。
    【一】いち 全体性の代数的表記。
    【具】ぐ  「具-欠」の「具」。条件として備えること。14行の「有-具」の「具」とは異なる。

00023: 體は一を闕く》 (「闕」は解説では「欠」とする。)

    【體】たい 「一性二体」の「二体」のこと、つまり下位の「一一」のこと。
    【一】いち 全体性の代数的表記。
    【闕】けつ 「具-欠」の「欠」。条件を欠いていること。

00024: 具一體二〉剖して經を爲す〉

    【具】ぐ  「具-欠」の「具」。条件として備えること。
    【一】いち 全体性の代数的表記。
    【體】たい 「一性二体」の「二体」のこと。
    【二】に  相補的な二項に展開されたものの代数的表記。
    【剖】ぼう 上位の「一」が下位の「二」に分割されること。
    【經】けい 展開と統合の方向を「經」という。これは、地球の経線から連想されたものである。
    【爲】い  為すこと。「爲-成」いせいの「爲」であるから、厳密には「爲す」いすと読む。

00025: 一氣一物》對して緯を爲す》

    【一】いち 全体の代数的表記。
    【氣】き  無形のものの総称。
    【一】いち 全体の代数的表記。
    【物】ぶつ 有形のものの総称。この「物」は、14行の「物」と同一であるが、「性」と切り離されている。
    【對】たい 一対一の対応関係にあると言うこと。
    【緯】い  展開と統合の方向を示す「経」に対して、一対一に対置される関係を言う。これは地球の
         緯線から連想されたものである。
    【爲】い  為すこと。「為-成」いせいの「為」であるから、厳密には「為す」いすと読む。

00026: 分るれは則ち二 粲立す〉

    【分】ぶん 全体が条理に沿ってふたつに展開されること。
    【二】に  相補的な二項に展開されたものの代数的表記。
    【粲立】さんりつ 相補的な二項に展開している状態を形容する語。

00027: 合すれば則ち一 混成す》

    【合】ごう 相補的二項が、ひとつの全体に統合されること。
    【一】いち 全体の代数的表記。
    【混成】こんせい 相補的二項が統合されて、ひとつの全体を形成している状態を形容する語。

00028: 一は徒らに一なれば則ち分合せず〉

    【一】いち 全体の代数的表記。
    【徒】いらずらに ただたんに。
    【不分合】ぶんごうせず ひとつもののでありながら、ふたつに分かれたり、またひとつに合わさったりしない、
             ということ。

00029: 二は徒らに二なれば則ち剖對せず》

    【二】に  相補的な二項に展開されたものの代数的表記。
    【徒】いたずらに ただたんに。
    【不剖對】ぼうたいせず ひとつのものから分岐したり、対応関係を形成したりしないということ。

00030: 一二は徒らならず。

    【一】いち 上の(一)のこと。

              (一) ----概念的には「性」とされる。(一性)
              /\
            (一) (一) --概念的には「体」とされる。(二体)

    【二】 下のふたつの(一)のこと。この連鎖は、上にも下にも際限なく続き、偶関係を持つ。
    【不徒】いたずらならず この文脈では、たんなる数ではない、と言うほどの意味。

00031: 立てば則ち各なり〉

    【立】りつ 全体から分かれ出た無数の部分が他と異なるものとして存在すること。  
    【各】かく おのおの独立のものであるということ。

00032: 成れば則ち全なり》是を以て

    【成】せい 偶関係を持つ「一」と「二」が、ひとまとまりのものとして形作られる こと。
    【全】ぜん 全体性を持つこと。自立した存在としてあること。
    【是を以て】ここをもって これを条件として。

00033: 剖を以て一を分つ〉

    【剖】ぼう 二分岐すること。
    【一】いち 二分岐する前の存在の代数的表記。
    【分】ぶん 分かつこと。

00034: 對を以て二を合す》
 
    【對】たい 相補的二項として対峙すること。
    【二】に  相補的二項として展開された状態の代数的表記。
    【合】ごう 合わさって一段階高次の全体になること。

00035: 剖けば 則ち經なり〉

    【剖】ぼう 偶関係を以て相補的二項に分岐すること。
    【經】けい 条理の体系に於いては、縦方向を意味する。地球の経線から類推されたもの。

00036: 對すれば則ち緯なり》

    【對】たい 相補的二項として対峙すること。
    【緯】  条理の体系に於いては、横方向を意味する。地球の緯線から類推されたもの。

関連する玄語図  経緯剖対図/一一精粗図けいいぼうたいず/いちいちせいそず その他の「本宗」の図。

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