【 校 異 】

 朱で図名と長い注記が書かれている。朱の訂正は梅園のものである。図の中の訂正も
朱のものは梅園のものである。ただし、老齢のゆえの衰えであろうか、思考が混濁してい
るように思われる。墨の訂正はおそらく広角のものであろう。




自筆稿本を見ると、下図のように訂正されている。




「行」の字は棒線で消されているが、「動転」を「爲成」に変更するのは間違いである。
これは三浦広角の無理解による誤解であろう。                   

 左の「技」は○で消されてもとの字に戻されている。ここは雌雄の交わりを言うのであ
るから「交接」のままでよいのであるが、訂正の仕方からしても、迷いのあることが分か
る。この図の訂正は、訂正と言うよりも「混乱の記録」と言った方がよい。      

 岩波版では、P592, 図番125で、訂正文字が採用されて以下のようになっている。  



 この図を見ただけでは、上記のような訂正の過程は分からない。この訂正が間違いなく
梅園のものだとする証拠はないが、訂正前の図は間違いなく梅園の筆である。しかし、概
念の整合性から推理すれば、訂正を採用するのはどうかと思う。ことに、       

15800:  対待なる者は、天地の條理なり。                   
15801:  配当なる者は、人為の処置なり。                   
15802:  天地は安んぞ彼の配を知らん。是を以て、               
15803:  男女は、偶なり。                          
15804:  夫婦は、配なり。                          
15805:  男女を以て夫婦を配す。配の善なる者なり。              
15806:  善と雖も亦た人なり。故に                      
15807:  夫婦は転ぶこと有り。男女は変ずること無し。天人の別なり。      

というような記述を見ると、「牝牡」を「配」とする訂正にも道理はある。       ちなみに「牝牡」で検索用玄語訓読にGrepをかけると、 4137:  子苗は華実牝牡に絪縕す〉          4335:  動は則ち牝牡なり》                           4789:  動は牝牡を以て生す〉                          6254:  華実は已(すで)に見す》牝牡最も著し》                 6256:  動は牝牡を有す〉                            10541:  鳥獣は之に資して》而して牝牡に絪縕す》其の天と其の與とに給資す》而して 10609:  動植は則ち華実牝牡を露す》                       13238:  動 牝牡を偶す〉                            13475:  動は則ち牝牡し〉植は則ち華実す》                    13604:  緯偶に牝牡華実有り〉                          13854:  物を同にすれば〉則ち雌雄牝牡の類なり〉                 14034:  動は》牝牡を配として》而して子母に継ぐ》                14849:  形の伝うる所。牝牡は感応し。胎を其の中に託す。             15018:  動は》牝牡を偶とし》子母を継とす》                   という文が出てくる。「牝牡」を含む文は、玄語の中にこれだけしかない。       14034:  動は》牝牡を配として》而して子母に継ぐ》                という記述は、                                  15803:  男女は、偶なり。                            15805:  男女を以て夫婦を配す。配の善なる者なり。                15807:  夫婦は転ぶこと有り。男女は変ずること無し。天人の別なり。        になぞらえて、「ひとつがいの雄と雌に配して」という意味に解釈するのが妥当であろう。   
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